アメリカのコンシーバブル・ライフ・サイエンシーズ研究機関で行われた研究によって、体外受精の一工程である顕微授精がこれまでの常識を覆すかもしれない、驚くべき技術革新を迎えました。
普通ならば顕微鏡を覗き込んで人の手でこなさねばならない細かい作業を、ロボットと人工知能が一括して担当し、しかも3700キロ離れた遠隔地からの指令で操作を完了させたというのです。
自動化された機械によって新たな生命を生み出す環境が整えられつつあるのです。
こうした画期的な技術は、生殖医療の常識を変え、世界中の不妊治療の現場に新しい風を吹き込むと期待されていますが、果たしてこれは本当に“次の当たり前”となっていくのでしょうか。
研究内容の詳細は『RBMO』にて発表されました。
目次
- 職人芸に頼る不妊治療の限界
- AI操作の体外受精で命を生み出す
- ロボットは人の手を超えるのか?課題と未来図
職人芸に頼る不妊治療の限界

不妊治療の世界では、卵子と精子を顕微鏡レベルで操作して受精させる顕微授精という技術が広く行われています。
これは、まるで職人が極小の宝石を一つずつ手作業で磨き上げるかのような精巧さが求められ、術者の熟練度やその日のコンディションによっても仕上がりが変わってしまうという特徴がありました。
いくら成功率が高いといっても、人によるばらつきや集中力の限界は避けられません。
こうした制約を打破する鍵として期待されているのが、自動化と人工知能技術の活用です。
自動運転や産業用ロボットがそうであるように、もし受精のプロセスすら正確無比に機械が行えるならば、時間や場所を問わず安定した成果が得られるだけでなく、熟練技術者が不足する地域でも恩恵を受けられるようになります。