不幸を引き算する発想

幸福にはあっという間に慣れてしまうと書いた。その一方で人間は不幸にはなかなか慣れない。職場に嫌な人間が一人いたら、よしんば残りの100人が気の合う仲間がいてもずっと不快指数は高いままだ。SNSの投稿に対して100件のポジティブなコメントがついても、1件の嫌なコメントがついたらその瞬間に不幸になる。人の持つ機能性は簡単に幸福になることを許してくれない。

そこで提案したいのが「幸福を足し算するのではなく、不幸を引き算する」という発想だ。人間関係についていえば、気の合う仲間や一緒にいて楽しいともだちを増やし続けようとすると、どこかで気の合わない、そして簡単に損切りできない人間関係が生まれてしまう。この場合、思い切って人間関係をいたずらに増やそうとするのを完全にやめてしまい、ネガティブな人間関係を極力ゼロに近づけようという考え方だ。そうすることで人間関係の悩みを減らすことができれば、自然と幸福に近づくことができると思うのである。

昨今、ミニマリストな生き方が奨励されているのも、自分の人生には本当は必要のない、重要でない要素を引き算していこうという発想から来ているのではないだろうか。

モノが増えれば必然的にメンテナンスの手間が生まれる。自宅で過ごす時間を楽しくしようと、観葉植物や絵画、小物をたくさん買い込んだ結果、掃除や手入れの手間が増えて逆に楽しく過ごす時間が減ってしまったり、メンテナンスの手間が増えたら本末転倒である。なかったら直ちに困るもの意外は極力持たないことで、手間や時間の消耗といった不幸を引き算できる。

筆者は最近、意識的に自分の気持ちが暗くなる話題やニュースを遠ざけるようにしている。たとえば自分でも他人でも「子供に関する悲劇的な話題」は絶対に聞きたくないと思ってしまう。知ったところで何もメリットはなく、ただ気持ちが悲しくなってしまうだけだからだ。これも一つの引き算の発想である。

ネガティブ要素を徹底的に排除すれば、待っているのは快適で楽しいシンプルライフだ。若い頃はとかく、いろんな選択肢、いろんなもの、いろんな人間関係でずいぶん苦しんだ時期もあったが、思い切って引き算をすることで人生はグッと楽に生きられると思うのである。

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