4月2日号のNature誌に「A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia」というタイトルの論文が発表されている。帯状疱疹ワクチンを受けた人では認知症の発症率が低いことをNatural experiment(実際の医療情報データベース)で確認したものである。

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帯状疱疹を起こすヘルペスウイルスは神経親和性が高く(神経細胞に感染しやすい)、肋間神経に沿ってウイルス感染症が広がるとかなりの激痛を伴うことが多い。また、この神経親和性から、認知症との関連が示唆されていたが、イギリスのウエールズの電子健康データをもとに帯状疱疹ワクチン接種を受けた人において認知症発生率が低いことを確認したのである。
ウエールズで、出生日が1933年9月2日前後の1週間単位のひとたちで比較したところ、接種率が0.01%と47.2%と大きく異なっていた。これは、接種を受けることができる人を年齢(生年月日)で区切ったからだ。
この人たち(年齢的な差がほとんどない)を7年間追跡したところ、新たに認知症と診断された割合が約20%低かったとのことだった。なぜか、女性の方が認知症発生率は低かった。集団全体でみると認知症発症率が3.5%も下がったのだ。
イングランドでも同じような結果が出ており、ヘルペスウイルスが認知症を起こす要因のひとつであること、ワクチン接種で認知症を予防、もしくは、進行を遅延させる可能性が示されたことは重要だ。
日本では、軽度認知症を含めると、認知症の有病者は約1000万人である。帯状疱疹ワクチンで認知症と診断される人が20%ずつ減れば、非常に大きなインパクトがある。テレビで帯状疱疹ワクチンの宣伝が流れているが、認知症を減らす効果を謳った方が関心を引くと思う。と言うと、過大広告だと騒ぐ人が必ず出てくるが、自分たちでエビデンスを評価できない人たちの空騒ぎだ。