この豆には「FRIL(Flt3 Receptor Interacting Lectin)」という天然の抗ウイルスタンパク質が含まれています。
FRILはウイルスの表面にある糖鎖と結合し、それらを「網のように」絡めて凝集させ、感染できなくする性質があるのです(下図を参照)。
研究では、このフジマメのFRILを含むガムを用い、インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2)と単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)への中和効果を調べました。
ここでいう「中和」とは、ウイルスが細胞に感染して自己複製する能力を失わせることを意味します。
理論的には、中和によりウイルス量が減少し、感染拡大のリスクも下がると考えられます。

チームは実験で、ガムを噛んだときにどれくらいFRILが放出されるかを、人工咀嚼装置(ART-5)を用いて測定したところ、15分でおよそ半分以上のFRILが放出されることが確認されました。
さらにウイルスをFRILガムと混ぜた実験では、対象としたインフルエンザウイルスとヘルペルウイルスの双方でなんと95%以上中和されるという結果が得られたのです。
しかも、このFRILガムは常温で2年以上保管しても有効性が落ちないことが確認されており、冷蔵や冷凍の必要がないという利点もあります。

私たちはこれまで、「ワクチンを打つ」「薬を飲む」といった方法で感染症に立ち向かってきました。
しかし、ワクチンでは防げない感染や、薬剤耐性ウイルスの出現が問題となっている今、口の中でウイルスを直接捕まえて無力化するという発想は、新たな可能性を切り開くものでしょう。