1万2千年前に地球上から姿を消したとされる伝説の大型オオカミ「ダイアウルフ」。その巨大で力強い姿は、人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』でも描かれており、記憶に残っている人もいるかもしれない。そんなダイアウルフが、現代の科学技術によって再びこの世に生を受けたという驚くべきニュースが飛び込んできた。遺伝子工学企業「コロッサル・バイオサイエンス(Colossal Biosciences)」が、世界初となる動物種の「脱絶滅(de-extinction)」に成功し、3頭のダイアウルフの子狼を誕生させたと発表したのだ。

氷河期の覇者、ダイアウルフとは?

 ダイアウルフは、かつて北米大陸や南米大陸に広く生息していた大型のイヌ科動物だ。現生のハイイロオオカミよりも最大で25%ほど体が大きく、頑丈な顎とわずかに幅広の頭、そして厚い毛皮を持っていたとされる。馬やバイソンなどを主食とする「超肉食動物」だった彼らは、最終氷期の終わりに姿を消した。その原因は気候変動による獲物の減少や、人類による狩猟などが複合的に影響したと考えられているが、正確な理由は未だ謎に包まれている。

甦らせる技術:化石DNAと最先端ゲノム編集の融合  Colossal Biosciences社は、この失われた種を現代に蘇らせるため、驚異的な技術を駆使した。まず、オハイオ州で発見された約1万3千年前の歯と、アイダホ州で発見された約7万2千年前の内耳骨という、二つのダイアウルフの化石から古代DNAを抽出。最新の技術を用いてその遺伝情報を解読し、再構築することに成功した。これは、これまで利用可能だったダイアウルフのゲノム情報の500倍以上もの詳細なデータを得る画期的な成果だったという。

 次にダイアウルフに最も近縁な現生種であるハイイロオオカミのゲノム(全遺伝情報)をベースに、ダイアウルフ特有の遺伝子情報を「編集」によって組み込んだ。これは、CRISPR(クリスパー)などの最先端遺伝子編集技術を用いて、失われた古代の遺伝子を現代の近縁種のDNAに“書き込む”作業だ。

世界初の“脱絶滅”成功!氷河期のオオカミ「ダイアウルフ」が現代に蘇る!
(画像=Image by Miroslaw Miras from Pixabay、『TOCANA』より 引用)

 同社のCEO兼共同創設者であるベン・ラム氏は、これを映画『ジュラシック・パーク』とは逆のアプローチだと説明する。「我々はマンモスのDNAの穴を埋めるのではなく、失われたマンモスの遺伝子をアジアゾウに組み込もうとしているのです」。(同社はマンモスの脱絶滅も目指している)

 こうして作られた「ダイアウルフ化」された細胞核を、ドナーの卵細胞に移植。作成された胚を代理母(おそらくハイイロオオカミ)の子宮に移植し、異種間での妊娠・出産に成功した。

 2024年10月、こうして3頭の健康なダイアウルフの子狼が誕生。彼らにはローマ建国神話の双子と『ゲーム・オブ・スローンズ』の登場人物にちなんで、「ロムルス」「レムス」「カリーシ」と名付けられた。現在、子狼たちは米国内にある2,000エーカー以上の広大な保護区で元気に育っているという。