プロサッカーリーグ・J1のFC町田ゼルビアの黒田剛監督がパワー・ハラスメント行為を行っているとの訴えが、日本サッカー協会が設置している相談窓口に寄せられている事案。町田ゼルビアは6日、第3者による調査委員会が「パワー・ハラスメントには該当しない」と結論づけた調査報告書を公表し、一部週刊誌の報道に対して「極めて悪質な記事であり、大変遺憾です」とするリリースを公表。さらに町田ゼルビアの藤田晋社長がnote上で長文にわたる週刊誌記事への反論文を掲載し、「いかにこの記事が酷いものであるか、わかってもらえると思います」などと綴っている。それによれば、週刊誌から3回にわたり送付された質問状のすべてに対し、藤田社長自ら書面で回答し、黒田監督本人も直接、対面で取材に応じており、さらに特別調査委員会による調査でもハラスメント行為の不存在が報告されていることから、週刊誌の報道姿勢が議論を呼んでいる。専門家は「特にここ2~3年、メディアの姿勢が問われている」と指摘する。ちなみに町田ゼルビアはBUSINESS JOURNALの取材に対し「現時点では成り行きを静観させていただきたく存じます」との返答を寄せた。
note上での藤田社長の説明によれば、最初に週刊誌からクラブへ質問状が届いたのは3月17日。これに対し藤田社長は書面で回答し、3月20日には黒田監督がクラブハウスで週刊誌の取材に対面で応対。その後も2度にわたり質問状が寄せられ、藤田社長名で回答。そのなかで藤田社長は「先日より第三者委員会の弁護士がクラブの選手、スタッフにヒアリングを進めており、近く意見書をもらえる予定です」(編註:同note上で藤田氏により「『第三者委員会』と書いたのは、第3者による調査委員会の間違いです」と訂正)、「記事にする際には、どうか慎重なご判断をお願いします」などと訴えていたが、4月6日に記事が掲載。藤田社長は次のように綴っている。
「独自に調査を行っていることを伝え、その結果を待って欲しかったのですが」
「非常に残念です。並行して訴訟も行いますが、訴訟には長い時間がかかり、たとえ勝ったとしてもその時にはもう手遅れです。この記事がきっかけで炎上し、ネットリンチに遭い、パワハラ監督のレッテルを貼られ、デジタルタトゥーが残れば、黒田監督の今後のキャリアを終わらせるだけの力があります」
「調査委員会の報告書の内容は非常に赤裸々ではありますが、それを読んでいただければ、いかにこの記事が酷いものであるか、わかってもらえると思います」
報道する根拠が必要
一連の事態を受けて、メディアの報道のあり方について、さまざまな声が上がる事態となっているが、元日本テレビ・ディレクター兼解説キャスターで桜美林大学・目白大学非常勤講師の水島宏明氏はいう。
「一報段階でそれを報じるというのはメディアとしての役割ではあると思いますが、会社として特別調査委員会を立ち上げて、調査をした結果パワハラの事実がなかったという結論が出たのであれば、明確な根拠がない限りは報じるべきではないということになるでしょう。また、当該週刊誌の記事を読む限りは、パワハラがあったという根拠は薄いという印象を受けます。メディアが報じるには、この事象の何が問題なのか、企業としてどこに落ち度があるのかを示すなど、それなりの理由が必要だと思いますが、その理由が不明確だと感じました。
今回でいえば町田ゼルビア、あるいは監督個人にとっては名誉毀損になり得るわけですから、根拠が示されなければならないと思います。特別調査委員会がパワハラがなかったと結論づけている以上、『それでも、パワハラはあった』とする理由を示す必要があります。そして、片方の当事者だけに同調するということは避けるべきです」
キー局をはじめとする大手メディアの報道基準はどうなっているのか。
「一般的にハラスメント事案は民事訴訟の対象であり、認定が非常に難しいため、大手メディアはそこによほどの悪質性がなければ報道はしません。それゆえに、結果的には重大な被害が存在するのにもかかわらず報道されないということが起こり得るというメディアの問題も、出てきています」(水島氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=水島宏明/メディア評論家、桜美林大学・目白大学非常勤講師)
提供元・Business Journal
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