これこそが今回の成果を革新的なものにしている理由です。

もし今後、さらに大規模なモデルや多種多様な学習データと組み合わせることができれば、AIは文字通り“なんでもできる”存在へと近づいていくかもしれません。

いわば、あらゆるスポーツ競技を制覇し、さらに新種目が追加されてもすぐに修得してしまうような驚異的アスリートが生まれる可能性があるのです。

こうした展望は、一見すると夢物語のように思えますが、すでに“マインクラフトでダイヤモンドを入手したAI”という具体的な成果があるだけに、決して荒唐無稽ではありません。

研究者たちは次の目的としてマインクラフトのボス的な存在と言える「エンダードラゴン」を倒すことを目指すと述べています。

現実の課題でも、同じように“世界を理解し、自律的に学び、応用し続けるAI”が大きな力を発揮するようになるでしょう。

たとえば工場の自動化、物流や輸送ルートの最適化、あるいは医療現場でのサポートまで、応用先は無数に広がっています。

本研究の一連の結果は「AIの汎用学習は可能なのか?」という長年の疑問に、一つの力強い“イエス”を示すものです。

しかも、その“イエス”をゲームの実績だけでなく、多彩なタスクで裏付けたという点が、今回の最も意義深いところだといえます。

全ての画像を見る

元論文

Mastering diverse control tasks through world models
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08744-2

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者