中世ヨーロッパは、時に残酷な刑罰が行われた時代として知られる。その中でも「異端者のフォーク(Heretic’s Fork)」は、歴史上最も陰惨な拷問器具の一つとして語り継がれている。この器具の目的は、即座に命を奪うことではない。むしろ、犠牲者に耐え難い苦痛を長時間与え続け、その口を封じることにあった。逃れることも楽になることも許されない、まさに生き地獄を生み出すための道具だったのである。
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顎と胸を貫く絶え間ない痛み:異端者のフォークの構造
「異端者のフォーク」の構造は、驚くほど単純でありながら、恐ろしく効果的だ。それは一本の金属棒の両端に、それぞれ二股に分かれた鋭い先端を持つフォーク状の突起がついたものだ。使用する際は、この器具を犠牲者の首に革製の首輪などで固定する。一方のフォークの先端は顎の下に、もう一方の先端は胸骨(胸の中央の骨)の上部に突き立てられる形となる。
この状態で固定されると、犠牲者は頭をわずかにでも下げることができない。もし頭を下げようとしたり、あるいは言葉を発しようとして顎を動かしたりすると、鋭い先端が容赦なく喉や胸の肉に食い込むのだ。この「異端者のフォーク」の主な目的は処刑ではなく、抵抗の意思を打ち砕くことにあった。
当時、異端(教会の公式な教義に反する思想)は社会に対する重大な脅威とみなされていた。「異端者のフォーク」は、異端の疑いをかけられた者に自らの考えを撤回させたり、無実であっても罪を「告白」させたりするための残酷な圧力として用いられたのである。絶え間ない痛みと声を出すことすら許されない状況は、多くの者を精神的に追い詰め、苦しみから逃れるためだけに犯してもいない罪を認めさせたと言われている。

(画像=画像提供:Flominator(Wikimedia Commons) ライセンス:CC BY-SA 3.0 出典ページ,『TOCANA』より 引用)