イメージとしては、花火の打ち上げをCGで再現するような感じです。
花火も、火薬の量や玉の作り方が少し違うだけで、夜空で散る色や形が変わりますよね。
それと同じように、タンパク質でも内部の構造や原子の配置がちょっと違うだけで、弾け飛ぶ方向や強さにわずかな差が現れるはずだ—という考えです。
具体的には、高エネルギーのレーザー光子を浴びせることで、タンパク質の原子が大量の電子を奪われ、分子全体が急激に正に帯電します。
すると原子同士が強い斥力で一気に弾き合い、四方八方へ“パッ”と吹き飛ぶのです。
研究者たちは、その飛び散った“破片”がどの方向へ向かったかを、あたかも地図のように記録するプログラムを作り、何百回もの爆発シミュレーションを繰り返して「破片の分布パターン」を大量に集めました。
このパターンこそがいわゆる「爆発フットプリント」で、まるで花火写真を何枚も撮りためて、それぞれの光の散り方を比べるようなものです。
次に、その膨大なフットプリントのデータを一つひとつ解析して、果たして同じタンパク質なら似たパターンになるのか、違うタンパク質なら異なるパターンを示すのかを確かめます。
たとえば、PCA(主成分分析)やt-SNEといった方法でデータを“見える化”すると、特徴が似ているパターンは画面上で近い場所にまとまり、特徴が違うパターンは自然と離れた位置に配置されます。
そのおかげで、それぞれのタンパク質の爆発パターンがどこまで似通っているか、一目でわかるようになるのです。
すると驚くことに、一見そっくりと思っていたタンパク質でも爆発フットプリントがはっきり分かれて、別々のクラスターを作る例が続出したのです。
まさに双子が遠目には見分けがつかないけれど、よく見ると細かい表情や仕草の違いで区別できるようになる、そんな感覚に近いかもしれません。
しかもこの結果は、「分子が持つわずかな構造の違いが、爆発の瞬間にかなり大きく影響を与える」という点を示しています。