日本生産性本部が調査・発表するJCSI(日本版顧客満足度指数)の通信販売業種において、「ヨドバシ・ドット・コム」が11年連続で1位となっていることが一部SNS上で話題となっている。ヨドバシ・ドット・コムをめぐっては以前からUIや操作性に不評の声も一部にあるが、そうした短所を補って余るほどの長所があるという評価も聞かれる。ユーザから高い支持を得ている理由は何なのか。また、支持する声としては「ユーザをサイト内で無駄に回遊させない」「無駄な機能がないので購入したいものが決まっているときに最短で購入できる」「粗悪品や詐欺商品が混ざっていないので、いちいち真贋を見極めるためのチェックをする必要がない」といった感想も多いが、競合する「Amazon.co.jp(アマゾン)」や「楽天市場」と比較して、どのような特徴があるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 ヨドバシカメラがネット通販に進出したのは、楽天市場がサービスを開始した翌年の1998年のこと。アマゾンが日本に上陸するよりも早い段階でECに参入。2016年には「ヨドバシエクストリーム」で購入品を最短2時間半で無料配送するサービスを開始。このとき、東京都内に在庫保管用の物流センターを3カ所、小型の配送拠点を10カ所新設し、約300台の車両も用意、システム増強も含めて30億円を投下。世間では「乾電池1個でも無料配送」などと大きく注目された。

 現在、ヨドバシ・ドット・コムの取り扱い数は800万アイテム以上に上り、家電製品・日用品・食品・スポーツ・アウトドア用品など幅広いジャンルを揃えており、在庫のある商品なら最短で即日に配達。配達料金・入会費・年会費はすべて無料で、商品出荷日から最長180日間の補償も無料。会員登録をすると、大部分の商品で10%ポイント還元も受けられ、追加料金なしで翌日配達・指定日配達を設定できるなど、まさに至れり尽くせりのサービス内容となっている。

 ちなみにアマゾンで無料配送となるアマゾンプライム会員の料金は年額5900円、楽天市場では多くの商品で配送料が発生する。

ユーザは迷う必要なし

 一方、前述のとおり以前からUIなどの面ではマイナスの評価も少なくないが、それでもヨドバシ・ドット・コムの顧客満足度が高い理由について、ECサイトでの出品代行やコンサルティングなどを行う株式会社ネットショップ総研 https://netshop-soken.co.jp/ の幅貴道氏はいう。

「ECサイトとしての使い勝手やUIという点でいえば、良いとはいいづらいですし、他のサイトと比べると使いづらい面が多いです。例えば、『イヤホン』というキーワードで検索すると、検索結果の上位に4万円くらいする高価格の商品が並んだりします。並べ替え機能を使えばいいのですが、その行為を面倒くさいと感じるユーザも少なくないので、サイト離脱を招く恐れがあります。また、検索結果一覧から個別の商品ページに遷移すると、そこに他のイヤホンのカテゴリーページのようなリンクがあり、そこをクリックして、戻るボタンを押すと、さっき開いていたページがエラーになって開けなかったりします。ですので、UIという観点だけでいうと、あまり評価できることはありません。

 逆に評価できる点は、いろいろと検索するのが面倒なユーザや、買いたいものが決まっているユーザは迷う必要なく、すぐに購入できる点です。アマゾンのマーケットプレイスだと誰が出品しているのかよくわからない中華系メーカーの商品なども混ざっていますが、そういうものもないので、余計なことをする必要がありません。ヨドバシ・ドット・コムを使うユーザは買うものがある程度決まっていることが多いです。アマゾンなどですと、例えば『お風呂掃除グッズ』などぼんやりとしたキーワードで検索して、いろいろな商品が見つかって便利だと感じるユーザもいるでしょうが、余計な商品も目に入ってきますし、信用できない販売業者の商品もあるので、そこが大きな違いの一つかもしれません」

 ヨドバシ・ドット・コムが評価される理由として、日本の消費者の特性も影響しているという。

「他のECサイトでは、いろいろなクーポンのお知らや、追加で別の商品の購入を促す通知、購入を完了させようというタイミングで『こんな商品も売れてますよ』みたいな通知が出てきたりしますが、ヨドバシはそういうのがありません。日本人がセールスオファーを嫌う傾向があるので、ヨドバシが好感を持たれやすいのかもしれません。アマゾンは圧倒的に利用者が多いので、ネガティブな声が大きく聞こえがちですが、海外ではとてもユーザフレンドリーだと評価されていますからね。日本の消費者の特殊性、過度なセールスをされるのが嫌いという傾向は影響しているでしょう」(幅氏)

 では、なぜここまで顧客満足度が高いのか。

「ユーザが嫌がることをしていないという点、送料が無料で即日配達、ポイント還元率が高いことなどがウケているのでしょう。高額商品を買ってポイントをためて、それで日用品を買うというサイクルが生まれているというのも大きいです」

(文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研)

提供元・Business Journal

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