量子世界を触ってみました。
英国のランカスター大学(LU)で2023年に行われた研究は、量子世界の不思議な性質を持つ超流動体に触れた場合、どんな感じになるかを明らかにしています。
超流動体は目に見えるサイズになった量子的存在であり、水などの通常の流体とは違って粘度や摩擦がゼロという驚くべき性質を持ちます。
また超流動体をコップにためておくと、まるで重力に逆らうように、壁をよじ登って外に漏れだす奇妙な性質も知られています。
既存の研究でも超流動体の性質を解き明かすため多くの研究が行われてきましたが「人間の指が触れたらどんな感じか?」といった人間臭い疑問に関してはスルーされてきました。
今回の研究では、あえてこの疑問に答えるために高精度のセンサーが開発され、超流動体の内部に挿入されました。
粘度も摩擦もなく量子世界に片足を突っ込んだ存在、超流動体の感触とはいったいどんなものなのでしょうか?
結論から言えば、超流動体に指を突っ込んでもまとわりつく二次元の膜のように感じられ、内部は真空のように何も感じず、指から離れた熱がまた指に戻り、二次元層が指の表面を這いあがってくるのを感じます。
研究内容の詳細は2023年11月2日に『Nature Communications』にて「二次元境界超流体における結合準粒子状態の輸送(Transport of bound quasiparticle states in a two-dimensional boundary superfluid)」とのタイトルで公開されています。
目次
- 量子世界の感触はどんなものか?
- 感触は表面部分にしか存在せず中身は何も感じられない
量子世界の感触はどんなものか?

量子物理学が紐解く最も不思議な現象のひとつに、超流動体の存在があります。