サイコパスと聞くと連続殺人犯や冷酷な犯罪者を思い浮かべる人が多いだろう。だが、最新の研究によって、彼らの“共感の欠如”には、痛みの感じ方に深く関係している可能性があることが明らかになったという。

痛みに対する“感覚”が異なる?

 人は誰もが多少なりとも“サイコパス的な傾向”を持っているとされる。しかし、医学的に「サイコパス」と判断される人々は、その度合いが極端に高い。こうした人々は一般的に痛みに対する耐性が高い傾向があり、身体の反応としてもそれが確認されている。

 2022年の研究では、圧力による痛みを与えられた際、サイコパス傾向の高い人々は脳の活動が抑制されることがわかっている。今回の実験でも、彼らは自分が感じる痛みを“低めに”評価する傾向が見られた。

 実験では指先に空気圧をかけて痛みを与える装置を用い、参加者の発汗反応(皮膚電気反応)を測定。これはストレスや注意喚起の際に起こる生理反応だ。自分の痛みの限界点(痛覚閾値)を申告してもらい、そこに至るまでの刺激を段階的に与えて反応を観察した。

 その結果、サイコパス傾向の高い人々は、同じ痛みを受けても「それほど痛くない」と評価する一方で、皮膚の反応は他の参加者とほとんど差がなかった。つまり、身体は痛みに反応していても、心理的には“痛みを痛みとして認識していない”可能性があるのだ。

他人の痛みにも“無関心”な理由とは  研究チームはさらに、他人の痛みへの共感についても調査を行った。参加者には、ドアに指を挟む、ガラスの上を素足で歩くといった、痛みを想像させる画像を見せ、その反応を測定した。

 予想通り、サイコパス傾向の高い人々は、他人の痛みに対しても自分の痛みと同様に“鈍感”であることが確認された。彼らの発汗反応は他の参加者よりも低く、自己申告でも「他人の痛みを感じにくい」と答える傾向があった。

 これは、彼らが“意識的に”共感を避けているのではなく、そもそも脳の構造や働きにより、他人の痛みを「感じられない」可能性があることを示している。

「痛み」を感じる仕組みが違う?サイコパスの“共感できない”理由が明らかに
(画像=Image by Josh Clifford from Pixabay,『TOCANA』より 引用)