研究チームは今回、NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線分光器を用いて、2023年6月に海王星を観測しました。
観測は2回に分けて行われ、惑星の異なる経度(172度離れた位置)から別々にデータを取得することで、ほぼ地球から見える全面をカバーする形となっています。
近赤外線分光器は2.87〜5.27マイクロメートルの波長帯を高い解像度で捉えることができ、この範囲には三水素カチオン(H3+)に特有の輝線が含まれています。
そして観測の結果、明確にH3+のスペクトルが観測されただけでなく、赤外線のオーロラが南半球の中緯度に局所的に存在することがわかったのです。
このH3+の輝きは周囲よりも約1.7倍も強く、他の惑星で見られるオーロラと同様に、粒子が磁場に沿って大気に降り注いで発生したと考えられます。

さらに驚きだったのは、海王星の大気表面の温度が1989年当時の約750K(摂氏約480度)から、358K(約85度)にまで低下していたことです。
この温度の違いが、これまで海王星のH3+が検出されなかった大きな理由だったことも今回の研究で示されました。
低温では発光が非常に弱くなるため、従来の地上望遠鏡では明るい雲の反射に埋もれてしまい、検出が困難だったのです。
また、この大幅な温度低下は、季節や太陽活動サイクルといった長期的な変動だけで説明できず、海王星における未知の短期的な変化が関与している可能性を示しました。
今回の成果は、世界最高峰の観測機器であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)のおかげでもあります。