3年半以上にわたって3民族(セルビア系、クロアチア系、ボシュニャク系)間の紛争を続け、戦後欧州最悪の民族紛争となったボスニア紛争では20万人の犠牲者、200万人の難民・避難民を出した。1995年、パリでデイトン和平協定が締結されて一応終戦を迎えた。
ボスニアの複雑な政治システム、選挙システムは1995年のデイトン和平協定から生まれたものだ。国連安全保障理事会は、和平合意の実施を監督する上級代表を任命し、ボスニアの統治を監督してきた。現在、ドイツ人のクリスチャン・シュミット氏は2021年以降、そのポストを務めている。上級代表は、法律の制定や廃止、選挙で選ばれた政治家の解任などの権限があり、和平合意の履行を監視している。 シュミット上級代表は選挙法を改正し、ボスニアの政治停滞を打破し、連邦機能を改善し、3民族間の政治的、経済的共存メカニズムを促進させたいところだが、選挙法の改正には強い反対がある。
今回の裁判は、スルプスカ共和国の政治にも大きな影響を与えている。年末年始には、同地域の議会が「政治的動機に基づく裁判」が終わるまで、ボスニアのEU統合に必要な法改正を阻止する決議を採択した。シュミット氏はこの決定を違法とし、「すべての人が法律の下にあることを理解しなければならない」と強調した(オーストリア国営放送のヴェブサイドから)。
デイトン和平協定後、民族間に境界線が引かれ、分断は固定化された。ボスニアは2022年12月に欧州連合(EU)加盟候補の地位を得、24年3月に加盟交渉が開始されたが、ブリュッセルとの間で加盟交渉はまったく進展していない。 デイトン和平協定は3民族間の紛争を停止させたが、民族間の和解の道は依然見えず、RSのデイトン和平協定から離脱する動きが出てきているのだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。