憧れの一台が自分のものになるまで

デューンバギーのショップ

前回も書いたが、自分は55歳になる年の初旬に自身と自動車の関係性の総決算として、子供のときに最も憧れたクルマ、デューンバギーを手に入れることを決めた。趣味のクルマを買うとなれば、まず大事なのがお付き合いするショップ選びだ。デューンバギーの多くは空冷VWビートルのシャシーをベースとするカスタムカーである。

マンクスかインプか、そこが問題だ(った)!レストアベースの輸入から仕上げまで【デューンバギー恍惚日記】第2回
(画像=筆者が所有するのは1969年式「メイヤーズ・マンクス」。これはレストアが完了した翌2018年、ビキニトップをあつらえた時の撮影。黒く細いロールバーが現在の仕様とは異なっている。、『CARSMEET WEB』より 引用)

従って自分は、いわゆるオリジナルやヴィンテージしか扱わない方針の空冷VW専門ショップではなく、ある程度の柔軟性をもってカスタムやチューニングされたビートルも取り扱うお店を、都内周辺で探す必要があったのだ。早速ネットで調べてみると、デューンバギーを扱っている空冷VW専門店が簡単に見つかった。神奈川県大和市の「K’s Collection(ケーズコレクション )」がそれである。

メイヤーズ・マンクスを輸入する

当時ケーズコレクション (以下「ケーズ」と略)のホームページには2台のメイヤーズ・マンクスが委託販売車として掲載されていた。アポなしで突撃してみると、委託のマンクス現車は置いてなかったが、エンピ・インプ(EMPI Imp)の現車が1台あるから見てみたら、と同店の下村社長に促され、ガレージ内に鎮座するデューンバギーと初めて対面した。うす暗いガレージの中でもメタルフレークでギラギラと光る真っ赤なボディ。インプのボディは曲線的なデザインが特徴で、マンクスに比べると華やかで派手な雰囲気が強い。

そして何よりも(ここが重要)……大きい。正確に言うと、ボディ幅が広いのだ。そのリアフェンダーは10Jのホイールを履いても綺麗に収まるほどである。下村さんによれば、マンクスはインプに比べるとかなり小さいとのこと。自分が欲しいのはメイヤーズ・マンクスであることを再認識できたので、ケーズさんのご手配でマンクスのレストアベースを輸入、自分好みに仕上げて頂くことにした。

メイヤーズ・マンクスがやってきた

レストアベース選びはケーズさんに任せた。基本的にはなるべく安価にベースを仕入れて、仕上げにコストを掛ける方針だ。下村さんはほどなくレストアに適した車輌を見つけてきてくれた。1969〜’70年頃の「マンクス2」で、ボディ色はメタルフレーク・ブルー。リペイントが前提だから何色でも構わなかった。

エンジンは1.8リッターにボアアップされており、エンピの最も一般的な形式の黒いマフラー付き。この排気系や、ホイール+タイヤの足廻りも全部やり直すつもりだったので、レストアベースの段階で細かい注文をつけることはしなかった。カリフォルニアの片田舎でのんびりと惰眠を貪っていた小さな青いバギーが、遠い船旅を終えて横浜港に着いたのは2017年2月のことだった。

マンクスかインプか、そこが問題だ(った)!レストアベースの輸入から仕上げまで【デューンバギー恍惚日記】第2回
(画像=ケーズコレクションに到着した当初のマンクス。奥のカルマンと比較すると、約30cm短縮されたショート・ホイールベースであることが理解できるだろう。、『CARSMEET WEB』より 引用)

バラバラにしてシャシーに取り掛かる

ケーズコレクションに到着したバギーは、まずバラバラに分解され、レストア作業はシャシーのサビ落としから作業が始まった。ちなみにシャシーは1962年式。モーターツールを使うと熱をもってよろしくないとのことで、スクレイパーを用いての地道な手作業で表面の赤サビと古い防錆剤を剥離。それが終わると、浸透性防錆塗料「POR-15」を使用してシャシー、ギアボックス、全足廻りがブラックに塗装された。

浸透性防錆塗料を使用したのは、表面の赤サビが除去されたとは言え、全体的にサビが回っていたことを考慮しての判断。この塗料に含まれるケチミンという成分が、サビの水分と反応、アミン(樹脂)とケトン(溶剤)に置換され、水分が抜けた部分に万遍なく入り込んで硬化、強固な塗膜を形成する(らしい)。塗膜は硬くツルツルした印象であった。

次回はボディ塗装と足廻りなどのお話をしたいと思います。それではまた〜!

文・山田剛久/提供元・CARSMEET WEB

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