しかし、今回のように「日本に自生するオニシバリの果実」から抗HIV作用が確認されたのは初めてのことです。

オニシバリの果実に抗HIV活性物質を発見!

これまでオニシバリの成分研究は、主に葉に含まれるフラボノイドやクマリンなどに焦点が当てられてきました。

しかし研究チームは、まだ研究が進んでいなかった果実に注目。

この果実には毒性があり、誤食すると下痢や嘔吐を引き起こすことが知られていたのですが、そこに未知の生理活性物質が含まれているのではないかと考えたのです。

そこで東邦大学のチームは、学内の薬用植物園で育てたオニシバリの果実を乾燥させ、メタノールを使って成分を抽出。

得られた抽出物をさらに精密な分離・分析手法で解析し、合計10種類の「ダフナン型ジテルペノイド」という化合物を単離しました。

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オニシバリとオニシバリ果実より単離した新規ダフナン型ジテルペノイド/ Credit: 東邦大学 (2025)

その結果、そのうちの4種類の化合物が、HIVウイルスの複製を大きく抑える効果を持っていることが判明したのです。

特に重要だったのは、化合物の12位という部分に「シンナミリデンアセチル基」が結合していることでした。

これがあることで、HIVの増殖を強く抑える力が発揮されるとわかったのです。

この点は、これまでの抗HIV物質とは異なる構造的特徴であり、今後の創薬にとって新たな手がかりとなる可能性があります。

HIVのような世界規模の感染症に対して、日本の自然からヒントが得られるというのは、とても希望に満ちた話です。

今回の研究は、抗HIV薬の新しい候補を示すだけでなく、まだ解明されていない植物の力に光を当てる成果でもあります。

今後さらに他のジンチョウゲ科植物にも応用が広がれば、薬の選択肢が広がり、より多くの人の命を支えることにつながるでしょう。

薬のタネは、意外と私たちの身近に隠れているのかもしれません。