世界的に見て治安が良く、人々は総じて礼儀正しく優しいと言われてきた日本でも、昨今は痛ましい事件や事故が後を絶たない。そんな中、秩序を守りお互いを思いやる優しさに満ちた村を紹介しよう。

■平和な暮らしの始まりはパンを買う代金だった!?

 ヨーロッパに位置するルーマニア西部の緑に囲まれたエイベンタールは1827年に村として設立して以来、主にチェコ民族が暮らすのどかな村だ。実はこの村はルーマニア国内にとどまらず、世界からも注目を浴びる「泥棒のいない村」なのだ。

“悪人ゼロ民族”の秘密!「泥棒が存在しない村」とは? 20年も犯罪なし…
(画像=山間の小さな村、エイベンタール 画像は「Wikimedia Commons」より,『TOCANA』より 引用)

 エイベンタール村には必要がないという理由から警察署がない。セルビアとブルガリアの国境に近いメヘディンチ県の中にあるエイベンタール村はルーマニア国境の犯罪発生率において全国平均を大きく下回り、人々は互いを尊重し合い、穏やかに暮らすことで知られている。

 1960年代から80年代にかけてのチャウシェスク独裁政権の下、苦しい生活を強いられていたルーマニアだが1989年に起きた革命以降、国民の暮らしは大きく変わった。もちろんエイベンタール村でもその変化は見られた。

 革命後間もなく、村にあった唯一の商店が閉店すると村人たちは20キロ離れた別の村から1日おきに来るパン屋のトラックを見逃さないよう常に自宅で待機するようになってしまったという。1996年頃、村人の1人が袋にメモとパンの代金を入れて通りに置くようになり、他の住民もそれに続いたのが事の始まりだった。

 パンを積んだトラックの運転手は袋の中から代金を取り出し、メモに記されただけのパンと釣銭を入れて街頭の柱や住宅のフェンスに袋を戻して去って行く。この20年の間にパンの代金や購入済みのパンが盗まれたことは一度もないという。また、村の外からパンの代金を盗みにやって来るにしてもエイベンタール村までのガソリン代の方が高くつくと住民たちは考えているようである。

“悪人ゼロ民族”の秘密!「泥棒が存在しない村」とは? 20年も犯罪なし…
(画像=パンの代金が入った袋を下げに来た女性 「Oddity Central」の記事より,『TOCANA』より 引用)

 村の住民に話を聞いてみると「私はいつも4~5個のパンを買います。袋を置いていくけれどこれまでにパンや代金が無くなったことは一度もありません」と語る。また別の住民は「朝、袋を置いて農作業に出かけるんだけど夕方に戻って来て袋を見るといつもパンとおつりがきちんと入っているんだ」と話す。