さらに驚くべきは、カンジが英語の音声指示を理解できたことです。

カンジが8歳のときに行われた実験では、カンジと人間の2歳児に660の音声命令が与えられました。

結果、カンジは人間の子どもよりも良い成績を収め、彼が少なくとも人間の幼児と同程度の知能を持っていることが判明しています。

また、手話を習得していたゴリラの「ココ」の映像を見るだけでアメリカ手話(ASL)を学習してしまったことも彼の天才性を物語るエピソードの一つとして有名です。

マインクラフトまで楽しむように

凄いのはそれだけではありません。

カンジは火を起こし、道具を使い、調理を学ぶこともできました。

さらにマインクラフトやパックマンのようなゲームまでプレイして楽しむことができたのです。

カンジが生前にマインクラフトをプレイしたときの実際の映像がこちら。

後年のカンジの姿はもはや単なる「賢い動物」ではなく、人間に近い「もうひとつの知性をもった存在」のようだったといいます。

ただしカンジは人間の言語を深く理解していたものの、それを話すことはできませんでした。

これについて研究者たちは、人間とチンパンジーやボノボの発声器官の構造が違うことが原因だろうと述べています。

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カンジ(右)と妹のパンバニシャ(真ん中)/ Credit: en.wikipedia

しかしカンジは晩年に心臓病を患ってしまい、治療を受けていました。

この治療が成果を上げることはなく、2025年3月18日、カンジはエイプ・イニシアチブの職員によって、まったく反応を示さない状態で発見されたのです。

44歳でした。

ボノボの寿命は30〜50年といわれているので、十分に寿命を全うしたといえるでしょう。

エイプ・イニシアチブのスタッフらは「カンジの死は科学界にとって大きな損失であり、彼の残してくれたデータや映像は今後も多くの研究者によって分析され続けるだろう」と話しています。