そこで新約聖書「ヨハネによる福音書」第1章の書き出しの「初めに言(ロゴス)があった。言は神と共にあった。すべてのものは、これによってできた」という有名な聖句が思い出される。同聖句は、現代の最先端を行く量子力学の「世界は情報から成り立っている」という世界観と重なってくる。

ロゴスに関して興味深い聖句がある。一つは旧約聖書創世記第3章だ。人類の始祖アダムとエバが神の戒めを破ったことを知った神は人類が神のように善悪を知るものとなったことを憂い、人が命の木からも取って食べ、永久に生きるかもしれないことを恐れ、人をエデンの園から追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて命の木の道を守らせられた、と記述されている。

もう一つは同じ創世記第11章には「バベルの塔」の話が記述されている。人びとは天にも届く高い塔を建てようとした。人間の高慢さに怒った神は,言語を混乱させ,人びとを各地に散らして完成を妨げたという話だ。

「バベルの塔」の話から、神がケルビムと回る炎で守ろうとした「命の木」とは、神のロゴスではなかったか。なぜならば、「ヨハネによる福音書」第1章によれば、宇宙、森羅万象、全てが神の言葉から成っている。その神のロゴスが創世記で創造の源という意味から「命の木」として象徴的に表示されているのではないか、という解釈が出てくる。

聖書「すべてはロゴスから成り立っている」は量子力学「世界は情報から成り立っている」と酷似している。ただ、神の創造した世界(宇宙)が平坦で、ホログラムの世界かは分からない。

ロゴスは即情報とはいえない。ロゴスが集合して情報が生まれてくるのではないか。戦争や紛争は情報の混乱であり、ロゴスが恣意的に悪用された結果ともいえるのではないか。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。