設計者が修繕費用を負担するというのはイレギュラー

 修繕費用について隈研吾と施工事業者が負担する方向となっている理由について、富岡市はいう。

「『市の費用負担はなし』と公表いたしました。費用負担は設計業者と施工業者が協議しているところでございます。(隈研吾事務所が負担する理由について)設計業者及び施工業者並びに富岡市の協議において決定になりました」

 修繕費用を設計者や施工者が負担する方向となっている背景には何があると考えられるのか。前出・森山氏はいう。

「設計者が修繕費用を負担するというのは、よくあることではありません。通常、設計事 業者と発注者、施工事業者と発注者、各々の契約には瑕疵担保条項が入っていますが、屋根が腐朽するという事態は基本的には想定されないため、今回のケースはその対象外となっていると思われます。もし仮に隈研吾事務所が負担するのだとすれば、考えられるパターンは大きく2つです。建築士事務所は建築士賠償責任保険に入っており、今回の事案が補償の対象と認められたため隈研吾事務所が負担をすると申し出たかたちか、保険金の支払いの有無に関係なく、自ら責任があると認めて費用を負担すると申し出たかたちです。設計事務所の報酬はその建物の建設費全体の5~10%程度なので、もし修繕費用を負担すると設計による売上が吹き飛んでしまいます。ですので、隈研吾事務所としては、それでも費用を負担せざるを得ないと判断した、よほどの理由があったのかもしれません。

 また、施工事業者も負担するとのことですが、施工事業者は建築士から言われるがままに建設を進めるわけではなく、『この設計や工法だと、このようなリスクがあるので、やめたほうがよい』などと意見を言いながら進めるものです。ですので、基本的には完成した建物に何が問題が発生した場合は『自分たちは建築士から言われるがままに建設しただけ』という言い訳はできないものです。今回の施工事業者も、自分たちに一定の責任があると認識しているのかもしれません」

(文=Business Journal編集部、協力=森山高至/建築エコノミスト)

提供元・Business Journal

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