私たち現生人類(ホモ・サピエンス)は、いつどのように誕生したのでしょうか?

人類の起源については長い間、アフリカで約20〜30万年前に登場した「ホモ・サピエンス」こそが唯一の人類の祖先であると考えられてきました。

しかし最新の研究によると、この歴史にはもっと複雑な過程があったことがわかってきたのです。

英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の遺伝子研究で、現生人類の祖先は150万年前に一度2つの異なる集団に分かれており、30万年ほど前に再び融合していたことが明らかになったのです。

研究の詳細は2025年3月18日付で科学雑誌『Nature Genetics』に掲載されています。

目次

  • 人類進化の物語が一変する
  • 人類は祖先の「離散」と「集合」で誕生していた

人類進化の物語が一変する

これまで、私たち人類がどのようにして進化したかについては、アフリカで現れた「ホモ・サピエンス」という単一の祖先から進化したというシンプルな物語が主流でした。

ところが今回発表された研究はその考えを覆すものです。

ケンブリッジ大学の研究者たちは、現代人類が実は約150万年前に分かれた2つの異なる祖先集団の再統合によって形成された可能性があることを示しました。

ここで浮かび上がるのは、今まで知られていなかった人類進化の隠された部分です。

人類はひとつの流れで進化したのではなく、2つの異なる集団が分岐した後、約30万年前に再び出会い、遺伝的な交流を行ったと考えられています。

この発見により、人類の歴史は単純なものではなく、複雑で多様な過程を経ていることが明らかになったのです。

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Credit: canva

研究チームは今回、古代の骨から遺伝物質を抽出するのではなく、現代人のDNAを分析する方法を用いて、物理的な痕跡を残さなかったかもしれない祖先集団の存在を推測しました。

この研究で使用されたデータは、アフリカ・アジア・ヨーロッパ・アメリカ大陸の各地の集団からDNAを解析した「1000ゲノムプロジェクト」という国際的な取り組みから得られたものです。