ところで、教会は来月20日に復活祭(イースター)を迎える。復活祭はキリスト教会にとってイエスの生誕祭を祝うクリスマスと共に教会の2大祝日だ。フランシスコ教皇はその日までに健康を回復して世界の信者たちと共にイースターを祝いたいだろう。
特に、2025年のイースターは特別だ。今年は「聖年」だ。「聖年」の幕開けは、ローマ教皇が大聖堂にある「聖なる戸」(Holy Door)を開ける象徴的な儀式から始まった。これは、神への道が特別に開かれる象徴とされている。それだけではない。ローマ・カトリック教会と世界の正教会(東方正教会、東方諸教会)が同じ日(4月20日)にイースターを祝うのだ。
ローマ・カトリック教会(およびプロテスタント教会)は通常、グレゴリオ暦を使用して復活祭の日付を決定する一方、正教会の多くはユリウス暦に基づいて復活祭の日付を計算する。そのため、正教会の復活祭はカトリック教会よりも1週間から5週間遅れることが一般的だった。カトリック教会と正教会は1054年の「大シスマ(東西教会分裂)」以来、別々の暦で復活祭を祝うことが多く、同じ日に祝うことは稀だった。
ちなみに、キリスト教の復活祭の日付は、325年の第1ニカイア公会議で決められた。その原則は「春分後の最初の満月の後の日曜日」となっている。その意味で、2025年の一致は、ニカイア公会議の精神に戻る貴重な機会といえるわけだ。
2025年は第1ニカイア公会議(325年)からちょうど1700年目の記念の年だ。同公会議は、キリスト教の教義を統一し、復活祭の日付を決定した重要な会議だった。この節目の年に、カトリック教会と正教会が同じ日に復活祭を祝うことは、単なる偶然ではなく、歴史的な意味がある、といえるわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。