痩せ薬を入手したい場合、いつものようにGPに行くのではなく、特定の医療機関を通して処方箋を出してもらう必要がありますので、少し面倒くさいことになります。
また、ウゴービの場合はボディ・マス指数(BMI)が35以上であること、体重に関連した疾病を抱えていることが条件で、最長利用期間も2年間と限定されています。
ウゴービより強力な効果があるといわれるマンジャロは現在はスコットランド地方のみで利用できますが、今後さらに利用地域が拡大する見込みです。こちらの方は利用期間の限定はありませんが、NHSは今後12年をかけて英国広域に導入予定で、となると利用者数はあまり伸びません。
イングランド地方では「BMIが35以上」「関連疾病を持つ」という二つの条件を満たす人は約340万人に上りますが、NHSでの痩せ薬提供は今後3年間で22万人ほどに絞られる見込みです。1人の患者に処方すれば、年間で3000ポンド(約57万円)かかり、もし100万人単位の患者に痩せ薬を出すとなれば、そのコストの高さにNHSは破産するともいわれています。
政府の肥満防止政策を指揮するナヴィード・サタル教授によると、現在、英国で痩せ薬を服用する人の90パーセント以上はプライベートで薬を入手しているそうです(BBC、1月13日付)。つまり、NHSで痩せ薬にアクセスできる人は少数派なのです。
肥満率は社会的に孤立した地域で高い傾向があると教授は指摘しており、痩せ薬から最も恩恵を受けるはずの人々は手が出ない状態だと教授は述べています。
痩せ薬で健康が改善した人
先のBBCの記事は昨年7月からウゴービのトライアルに参加したレイさんの例を紹介しています。
レイさんは、最初は体重が148キロでしたが、今は134キロに落ちました。毎週、皮下注射を打った上に医師や栄養管理士と顔を合わせて面談を受けながらの体重減少でした。医療関係者によると、薬の使用だけではなく、生活様式を変える、より健康的な食事を取るなどの改善も必要だそうです。