オベルデシビルは、ウイルスの増殖に必要な「RNAポリメラーゼ」という酵素を阻害する働きをもち、ウイルスの増殖を効果的に抑制し、エボラウイルスの感染拡大を防ぐ可能性があります。

この薬は、新型コロナウイルスの抗ウイルス薬として開発された点滴薬レムデシビルがもとになっており、これを経口薬にしたものです。

では、経口薬オベルデシビルは、エボラウイルスに対してどれほどの効果を発揮するのでしょうか。

経口薬が人間に近い「サル」をエボラウイルスから救う

研究では、生物学的に人間に近いカニクイザルとアカゲザルを使用しました。

エボラウイルスに感染したカニクイザルとアカゲザル(10匹)に対して、感染24時間後にオベルデシビルを投与し、10日間継続したのです。

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錠剤がエボラウイルスに感染したサルを救った / Credit:Canva

その結果、カニクイザルでは80%、アカゲザルでは100%の生存率が確認されました

一方で、治療を受けなかったサル(3匹)はすべて死亡しており、オベルデシビルがウイルスの増殖を抑える強力な効果を持つことが示されました。

さらに、治療を受けたサルでは、血液中のウイルス量が大幅に減少し、炎症反応も軽減されていたことが報告されています。

また免疫反応を引き起こし、臓器の損傷を防ぎながら抗体を生成するのを助けていました。

この薬は、従来の抗体治療や静脈注射による抗ウイルス薬と異なり、錠剤やカプセルの形で服用できるため、流行地域での配布や投与が容易であるという大きな利点があります。

また、医療インフラが整っていない地域でも、自宅や診療所で簡単に使用できる可能性があるため、エボラウイルス感染症の流行を抑える上で重要な役割を果たすかもしれません。

今後の課題は、ヒトを対象とした臨床試験であり、安全性や有効性のさらなる検証が求められます。

エボラウイルスとの戦いはまだ終わっていませんが、オベルデシビルのような新しい治療薬の登場により、人類がこの致死的な感染症を克服する日が近づいているのかもしれません。