自民党はまさにこのようなタコ部屋であり、そこには近代的な契約の概念はない。約束はすべて口約束で、あとから知らないといえるので、その実行を担保するのがカネである。今回の商品券は、新人議員に贈与するポトラッチなのだ。
こういう構造は日本の企業にも普遍的である。年功序列や徒弟修行などのタコ部屋構造で個人を会社に閉じ込めるメンバーシップ雇用は、高度成長期の日本企業の競争力の源泉だったが、それは雇用が流動化して長期的関係が失われると足枷になる。
首相から商品券をもらった議員はお返しの義理を負う。今回のように返すと義理はなくなるが、石破政権では出世できない。しかし石破内閣の寿命はたかだか数ヶ月なので、長期的関係を破っても失うものはない――そう考えて商品券を返し、朝日新聞にネタを売り込んだ新人議員は合理的である。