兵庫県豊岡市にある水族館「城崎マリンワールド」で行われている、地域を代表する水産資源である「松葉がに(ズワイガニ)」に関する挑戦「カニプロジェクト」が注目を集めています。ズワイガニを卵から大人まで育てる試みは水族館では初。今年11月、甲羅の幅3.5cmまで育てることに成功し、プロジェクト発足から7年を経て大きな成果を得ました。
(アイキャッチ画像提供:日和山観光株式会社)
ズワイガニ繁殖の難題に挑戦
ズワイガニは、卵から成長して漁獲可能なサイズである甲幅(こうふく)10.5cmに至るまで約10年を要し、大人まで育つ確率は限りなく低いとされています。
この未知の成長過程を解明するため、2017年に「カニプロジェクト」が始動しました。

1匹のメスが1回に産む卵はおよそ5万粒ですが、大人にまで成長する確率は限りなくゼロに近く、成功した水族館は今まで存在しないそうです。
2018年、先行研究を参考に工夫を凝らした結果、初めて稚ガニの繁殖に成功。しかし、孵化した稚ガニがなかなか大きくならないという課題に直面しました。

初めての繁殖成功を経て約600匹の稚ガニが誕生したものの、共食いや脱皮失敗などで個体数が減少していき、繁殖成功からわずか2年ですべての個体が死亡してしまったといいます。
手間を惜しまない取り組みと発見
失敗後も、大きく育てるにはどうしたらいいか、プロジェクトチームを中心に試行錯誤を継続。
「カニのアパート」と呼ばれる1匹ずつの個別飼育により共食いを避け、1部屋ごとに餌やりや掃除など手間暇をかけて世話を行い、生存率を高めることに成功しました。

さらに、水温についても見直しを実施。ズワイガニは成長段階によってより低水温のエリアに移動していくことが知られています。