コンビニエンスストアチェーン「ファミリーマート」の一部店舗が店内に、「キャッシュレス決済は店舗手数料負担が極めて大きくなっております。現金・ファミペイでのお支払いをお願いできれば幸いです」と書かれたステッカーを掲出しているとして、一部で注目されている。PayPayや楽天ペイなどのQRコード決済での支払いはユーザにとっては便利な半面、決済手数料の負担はフランチャイズ(FC)店舗にとっては経営を圧迫するほどの重荷になっているのか。コンビニチェーン関係者の見解を交えて追ってみたい。
ファミリーマートにおける支払い手段は多岐にわたる。現金やクレジットカード(含む「銀聯カード」)、「Suica」や「PASMO」などの交通系ICカード、「楽天Edy」「WAON」などの電子マネー、「Apple Pay」や「Google Pay 」、以下のQRコード決済などで支払いが可能だ。
・ファミペイ
・PayPay
・楽天ペイ
・d払い
・LINE Pay
・J-Coin Pay
・ゆうちょPay
・メルペイ
ちなみにファミペイはファミリーマートの子会社・ファミマデジタルワンが運営するもので、アプリ限定の割引や商品がもらえるクーポンの配信など、ファミマ利用時にさまざまな特典が得られるキャンペーンが常時展開されている。月間の来店回数と購入金額に応じて翌月のランクが決定し、ランクに応じて特典が進呈される「ファミペイメンバーズプログラム」、支払いごとのファミマポイント0.5%還元なども用意されている。「お買い得商品」を買うとさらなるファミマポイントも獲得できる。
経営的には無視できないロス
そんなファミマの一部店舗で、上記のように現金やファミペイでの支払いを呼びかけるステッカーが掲出されているという。顧客がクレジットカードやQRコード決済で会計をする場合、決済手数料の負担が店舗側に生じる。たとえばPayPayの決済手数料は取引金額の1.60%(税別)または1.98%、楽天ペイは2.20%~、クレジットカードは2%台~となっている。コンビニチェーン関係者はいう。
「チェーンや個別の契約形態によって異なりますが、一般的にコンビニのFC店舗は月間の売上高から商品原価を引いた売上総利益のうちの4~6割ほどをチャージとして本部に支払い、残りのお金からアルバイト店員の給料や水道光熱費など店舗運営にかかる費用を支出します。基本的には店舗運営にかかる費用はFC加盟店側が負担するため、キャッシュレス決済の手数料も加盟店が負担しています。物価の上昇もあり、現在では廃棄ロスや水道光熱費の一部を本部が負担するのが一般的となっていますが、人件費をはじめ店舗運営コストは著しく上昇しているため、QRコード決済やクレカの手数料として2%の追加負担を強いられるというのは、経営的には無視できないロスになってきています。
コンビニの商品価格はスーパーなどと比較すると割高ですが、物価上昇と実質賃金減少が長引き消費者の懐が苦しくなるなか、価格に非常にシビアになった消費者がコンビニを避けて極力スーパーやディスカウントストアで買い物をしようとする傾向は、すでに見え始めています。首都圏であればコンビニの近くに出店攻勢をかけている格安ミニスーパー『まいばすけっと』にどんどん客を取られてしまう懸念もあります。売上が減ると利益の絶対額も減るので、キャッシュレス決済の手数料負担はますます重いものとなってきます。
決済手段のバリエーションは原則としてチェーン本部によって決められるものなので、FC加盟店の判断で一部の決済手段をやめるということはできないため、このようなお願いのステッカーを貼る店舗が出ているのだと推察されます。このような行為は本部としては好ましくないと考えるでしょうから、何らかの指導が入ってもおかしくはない事例でしょう」
ファミリーマートのFC契約では、「1FC-C」タイプの場合、月の営業総利益(商品総売上高-売上原価+営業収入)のうち300万円以下の部分は59%、300万1円以上・450万円以下の部分は52%、450万1円以上の部分は49%がフィーとして本部に徴収される。また、本部は店舗側で生じる店舗値下・廃棄ロス、水道光熱費の一部を負担するほか、店舗運営支援金(年120万円)の支払い、販売用什器・情報機器の貸与、総収入最低保証なども行っている。このほか、本部のスーパーバイザーが競合店動向・地域情報・市場動向の調査・分析を行いFC加盟店の経営を支援し、スタッフ採用や会計業務のサポートなども行っている。