複数のメディアの報道によると、ドイツ首相府はBNDの証拠について科学者に検証を依頼していた。スイスの「ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)」紙によれば、BNDは「研究所起源説」を裏付ける信頼性の高い証拠を持っていたとされる。これらの証拠は、過去数か月間に専門家会議で評価される予定だった。しかし、専門家による評価結果についての情報は公表されなかった。

メルケル政権からショルツ政権への移行後、BNDのカール長官は首相府に再び報告を行った。しかし、ドイツ連邦議会の情報機関監視委員会(PKGr)や世界保健機関(WHO)には、この情報は共有されなかった。

2024年末、ドイツ政府はBNDの知見を外部専門家に検証させることを決定。ロベルト・コッホ研究所(RKI)のラース・シャーデ所長とベルリンのウイルス学者クリスティアン・ドロステン博士を含む専門家チームが現在、BNDの情報の妥当性を評価している。最終結果はまだ公表されていない。

興味深い点は、BNDは昨年秋、詳細な情報を米中央情報局(CIA)にも提供していることだ。ところが、CIAは2025年1月に入って、「研究所事故の可能性は低い」との立場を示した。しかし、トランプ米政権がスタートした直後の1月25日、CIAは中国の研究室から流出した可能性が高いとする新たな評価を示したのだ。CIAは「入手可能な情報によれば、研究所起源説が、自然発生説よりも可能性が高い」と指摘。立場を転換した具体的な理由については説明しなかった。

以下は推測だが、バイデン前政権時代のCIAは「研究所流出悦」の裏付けになる可能性の情報・資料を恣意的に無視してきたが、トランプ政権後、BNDの資料が明らかになると隠蔽の疑いがかけられる恐れが出てくるため、BNDが提出した資料に基づいて、研究所流出説を支持する立場に急遽、転換したのではないか。

なお、BNDの報告にはウイルスが中国の研究所由来であるという仮説を裏付ける情報が含まれていたことについて、中国外務省の報道局長・毛寧氏は北京で、「新型コロナウイルスに関する問題で、中国はいかなる形の政治的操作も断固として拒否する」と強調し、BNDのWIV流出説を一蹴している。