日本最大の湿原である釧路湿原。そのスケールは日本離れしており、一生に一度は見てみたい景色が広がっています。ただし、その大部分が釧路湿原国立公園で、立ち入りが制限されています。ですので実際に見学できるのは展望台や鉄道の車窓、あるいはカヌーからになります。今回はツアーや車利用ではなく、公共交通機関を使って自力で釧路湿原を見学する方法を紹介します。
目次
釧路湿原の成り立ち
通年で見学できる展望台は?
釧路市湿原展望台へのアクセス
釧路市湿原展望台からのビューは?
細岡展望台へのアクセス
細岡展望台からのビューは?
まとめ
釧路湿原の成り立ち
釧路市の背後に広がる釧路湿原の面積は約2万6,000ヘクタール。国立公園は2万8,788ヘクタールあり、その中心部となる7,863ヘクタールが、水鳥の生息地などの湿地を保護する「ラムサール条約」登録湿地になっています。
この湿原の歴史は、今から約6,000年前にさかのぼります。その頃、地球の温度は現在よりも高く、海水面は2、3メートル高かったそうです。当時の釧路湿原は大きな湾になっていました。その後、世界の気温が低下すると海水面が下がり、ほぼ現在の海岸線と同じになってきました。内陸部はそれに応じて、湿地帯となったのです。
通年で見学できる展望台は?
広い釧路湿原ですが国立公園として保護されているので、中には観光客は立ち入ることはできません。道路も外側を走っており、展望台から眺めるのが一般的です。展望台それぞれは車で回れば遠くはないのですが、ペーパードライバーの筆者のように、みながみな運転できるわけではありません。そこでここでは実際の経験から、公共交通機関を使い釧路湿原にアプローチする方法を紹介していきたいと思います。
展望台は4つ。どれも見学自由です。
- 釧路市湿原展望台(通年オープン)阿寒バス湿原展望台下車、徒歩20分
- 細岡展望台(通年オープン)ビジターズラウンジあり。JR釧路湿原駅から徒歩10分
- サルボ展望台(冬季は除雪なしなので基本夏季のみ)塘路駅から徒歩45分
- コッタロ湿原展望台(冬季は除雪なしなので基本夏季のみ)塘路駅から車で15分
ここでは通年オープンで、車がなくても行ける「釧路市湿原展望台」と「細岡展望台」について解説していきます。
釧路市湿原展望台へのアクセス
釧路市から約15kmと、時間的にもアクセスしやすいのがこの釧路市湿原展望台でしょう。JR釧路駅を出てすぐ左にある釧路前バスターミナルから毎日8:55、10:25、13:25、14:45の1日4本、阿寒バスが出ています。展望台は終点ではなく「鶴居保養センター」行きなのでご注意ください。乗車時間は約40分。ワンマンバスで片道690円。交通系ICカードも使えます。往復で1380円かかるので、多めにチャージしておくと便利でしょう。バスは後ろ乗り前降りです。市内を出たバスは割とこまめに停まり、途中で空港方向と道は分かれます。
時刻表では、帰りのバス乗車時間まで70~90分あることになっています。しかし散策路を一周すると40~50分、展望台に10分とすると、展館内展示をゆっくり見る時間はないでしょう。
実際私は釧路駅発10:25のバスに乗ったのですが、11:04着のところ、遅れて11:15着になってしまいました。とくにトラブルはなく、自然に遅れていった感じです。なので早歩きで散策路を回ることに。かといって、その次のバスとなると、4時間待つことになるので、それでは長すぎますよね。
また、私は羽田から飛行機で釧路空港に着いたのですが、空港バスに乗って行くと釧路駅着が10時半ぐらいになり。10分違いで展望台行きバスに乗れず、残念でした。午後のバスは13:25発なので3時間ほど時間が空いてしまいます。ちなみに釧路駅にはロッカーはたくさんあり、スーツケースも入ります。
釧路市湿原展望台からのビューは?
「釧路市湿原展望台」は国道沿いにあるレンガ色をした天文台のような形をした建物で、昭和59年1月にオープンしました。バス停からはすぐです。私は勘違いしていたのですが、この建物の名称も「釧路市湿原展望台」なので、ここに入らないと展望台に行けないと思っていました。しかし本当の釧路市湿原展望台へ行く全長2.5kmの遊歩道は、この建物に入る前の横道から続いており、しかも無料でした。
ではこの建物には何があるかというと、1階がレストランと売店、2階が展示室、3階が屋内展望室、屋上が屋外展望台になっています。まちがえてバスを降りて最初にここへ来てしまったのですが、遊歩道を行かれる方は時間がないので最初にそちらへ行ったほうがいいでしょう。屋上の展望台もそれなりに眺めはいいのですが、手前の木が邪魔で遊歩道にある展望台からの眺めには負けます。ただし冬季は寒くて外の遊歩道は辛いと思うので、その場合はここの屋内展望台はありがたい存在になるでしょう。
ぐるりと一周する遊歩道ですが、湿原が見渡せるのはその一番先端の展望台だけ。途中は湿原でなく森の中を歩きます。遊歩道の半分はバリアフリーになっており、車椅子でも通ることもできるようになっています。展望台までは約1.2km。早歩きで徒歩15分、ゆっくりで20分ぐらいでしょうか。途中3か所、「広場」と名がついたベンチのある休憩所がありますが、ビューはありません。北海道らしいのが、熊よけの鈴をつけて歩いている人がいることでした。鈴は、釧路市湿原展望台建物内の受付で貸し出しています。
さて、肝心の展望台ですが、夏だったせいか手前の木々がこんもりしていて、見晴らしはまあまあでした。また、後述する細岡展望台のように、川など手前にアクセントになるものもなく、先に細岡展望台へ行っていると正直いまひとつの感があります。
展望台から先の遊歩道は上り下りの階段がある道です。先に下の方まで降るので、最後は階段の上りに少し息切れしました。1.1kmの道のりですが20分ぐらいはかかったもしれません。帰りのバスの時間が気になったのであまり休まずに歩きましたが、再び建物に戻ったのは帰りのバスが出る10分ぐらい前でした。
釧路市湿原展望台
- 住 所:北海道釧路市北斗6-11
- 開館時間:8:30~18:00/10~3月は9:00~17:00
- 定休日:12月31日~1月3日
- 入館料:大人・大学生480円、高校生250円、小・中学生120円
- URL:http://ja.kushiro-lakeakan.com/things_to_do/3639/
細岡展望台へのアクセス
細岡展望台までは、釧路駅から約25km。車だと40分ほどの距離ですが、公共交通機関で行くには釧路と網走を結ぶ単線のJR釧網線(せんもうせん)を利用し、「釧路湿原」駅で下車します。前述した「釧路市湿原展望台」と駅名が似ているので、混乱しないように。
この釧網線は釧路湿原の中を通るので、車窓の風景が楽しめます。夏季の週末には観光列車「くしろ湿原ノロッコ号」も運行しますが、走るのは在来線と同じ線路なので、車窓の風景自体は同じです。特に釧路湿原駅から先の塘路駅までの間が美しく、筆者はこの間で川を渡るシカの親子を車窓から見ました。問題はバスと同じく、本数が少ないということでしょうか。釧路発の釧路湿原駅行きは1日6本。しかも日中は本数が少ないのです。そのため、釧網線を使って釧路から往復、あるいは途中下車してその先へというプランだと、列車の時間が限られるでしょう。
その日、私の最終目的地は川湯温泉だったので、釧路駅14:16発に乗り、釧路湿原駅に14:34着。2時間ほど見学して釧路湿原駅16:23発に乗り、川湯温泉17:38着というスケジュールにしました。釧路に帰るなら、釧路湿原駅15:07発になるのであまり時間はないですね。。釧路湿原駅は無人駅なので、あらかじめ釧路駅で「釧路→釧路湿原」「釧路湿原→川湯温泉」という2枚の乗車券を買っておきました。釧路駅には自販機もありますが、釧路湿原発の乗車券も買うなら窓口がいいでしょう。
問題は荷物でした。重くはないといえスーツケース移動、そして釧路湿原駅は無人駅です。私のほかにも、やはりスーツケースを持って途中下車した女性がいました。駅を降りると、目の前にビジターセンターへ向かう階段があります。展望台はこの小山の先です。でも大丈夫。スーツケースを持って階段を登るのは、2~3分程度。3回程度階段を折り返すと、スーツケースを転がせる平らな道に出ます。そこから駐車場のある細岡ビジターズラウンジまでは、徒歩5分。ここで荷物を預かってもらいました。
細岡展望台からのビューは?
細岡ビジターズラウンジから、展望台までは徒歩5分ほど。展望台からはアフリカにありそうな湿原の景色が広がります。手前を流れるのは釧路川、奥にそびえるのは、雄雌の阿寒岳と素晴らしい景色です。どちらか一箇所しか行けないというなら、私は釧路市湿原展望台より細岡展望台を薦めます。雨がぱらつくなど天気は決してよくなかったのですが、時おり日差しが湿原の上に陽だまりを作り出し、それも美しい風景でした。
この細岡展望台は湿原の東側から西を見るという眺望なので、夕日が美しいことで有名だそうです。その時間までいることはできませんでしたが、季節によってはその時間を狙っていくのもいいかもしれません。
細岡ビジターズラウンジには、喫茶と軽食、小さな土産物屋コーナーがあります。鉄道の時間までここで待っていてもいいでしょう。荷物を預かってもらった人は開館時間にご注意ください。
細岡ビジターズラウンジ
- 住 所:釧路郡釧路町字達古武22番地9
- 開館時間:[4~5月] 9:00~17:00、[6~9月] 9:00~18:00、[10~11月] 9:00~16:00、[12~3月] 10:00~16:00
- 定休日:12/31~1/5
- 入館料:無料
- URL:https://www.kushiro-shitsugen-np.jp/kansatu/hosooka/
まとめ
今回は公共交通機関のみを使って釧路湿原を見学する方法を紹介しました。通年で行けるのは実質2つの展望台のみになります。あとはカヌーツアーに参加するのもひとつの方法でしょう。私が訪れたのは8月の真夏で緑が濃かったのですが、紅葉の秋や雪に包まれた冬の景色も見てみたい気になりました。それでは釧路を訪れたら、ぜひ釧路湿原を楽しんできてください。
文・写真 前原利行/提供元・たびこふれ
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