全14話のアニメシリーズをすべての組み合わせで視聴するには何度見ればよいのだろうか。掲示板サイト「4chan」で持ち上がったこの素朴な疑問は実は数学上の難問であった。そして数学者が本腰を入れて取り組むことになったのだ――。

■数学者が本腰で取り組んだ「涼宮ハルヒ問題」

 谷川流氏のライトノベル作品を原作とする2006年のテレビアニメシリーズ『涼宮ハルヒの憂鬱』は全14話で構成されているのだが、実際の放送で物語の時系列と異なる順序でエピソードが放映されるなど、どの順番で見ても問題ないといわれている。

 ということであれば、すべての組み合わせで見るには何度見ることになるのだろうか。

 もしも全3話のシリーズであったとすれば組み合わせは「123」、「132」、「213」、「231」、「312」、「321」の6通りとなり、この順序の視聴体験をすべて味わうには「123121321」の順番で9回視聴すればよいことになる。では全14話ではいったい何回視聴すればよいのか。

 ファンにとっては素朴なこの疑問が2011年に掲示板サイト「4chan」に書き込まれて話題になり「涼宮ハルヒ問題」と呼ばれるようになった。そして一部のユーザーからはその疑問が実は数学上の難問である「超置換(Superpermutation)」であることが指摘されたのだ。

 組合せ数学における超置換において5以上の集合の超置換は正確に特定できておらず数学上の難問とされてきた。5以上でも難問なのに、14話の組み合わせを導き出すというのは至難の業であることは間違いない。

 ナサニエル・ジョンソン氏はアニメファンではないが、2013年に数学教授が超置換に関する情報を検索していたところ、「涼宮ハルヒ問題」に関する議論に偶然出くわし、ブログに書かずにはいられないと感じた。

 その後、ジョンソン氏のブログ記事を発見した数学者のロビン・ヒューストン氏は興味を掻き立てられ、同僚のジェイ・パントン氏とヴィンス・ヴァッター氏と協力し、4chanで話題の「涼宮ハルヒ問題」に数学者として取り組んだのである。

数学者を本気にさせた「涼宮ハルヒ問題」すべての視聴順をコンプリートするのに必要な驚愕の時間とは
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 2018年にこの取り組みが功を奏し、ヒューストン氏らは「涼宮ハルヒ問題」の上限と下限を解明することができたとし、研究の成果を無料で利用可能な整数列(各項が整数である数列)のオンラインデータベースである「オンライン整数列大辞典(On-Line Encyclopedia of Integer Sequences、OEIS)」に投稿したのだ。ちなみにこの研究の筆頭著者は「匿名の4chan投稿者」と記されている。

 ではいったい何回見ることになるのか。

 科学系メディア「Popular Mechanics」の記事によると彼らの計算結果は、最低でも938億8431万3611回の視聴が必要で、最大では939億2423万411回になるということだ。

 各エピソードが約24分のアニメを1日に1回、「匿名の4chan投稿者」のお望み通りに視聴するとすれば約400万年かかることになる。一生を捧げても全然足りないことがわかっていても熱心なファンは“コンプ”を目指すのだろうか。

文=仲田しんじ

提供元・TOCANA

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