参考までに、国際原子力機関(IAEA)は最近、イランにおけるウラン濃縮度が「深刻に憂慮すべき」増加を示していると報告した。これによると、2月8日時点で同国には最大60%濃縮されたウランが推定274.8キログラムあり、11月より92.5キログラム増加した。核爆弾を作るには90パーセントまで濃縮する必要がある。イランの核兵器製造の「Xデー」が近づいてきている。

イランは2015年、米国、中国、ロシア、フランス、英国、ドイツの6カ国と、イランの核プログラムを制限する核合意を締結した。しかし、米国は2018年、当時のトランプ大統領の下でこの合意を破棄し、イランに対する制裁を再導入した。それに対抗する形で、イランは合意の義務を果たすことを止め、核関連活動を継続してきた経緯がある。

そこでトランプ氏はイラン側を説得するためにお得意の「手紙」作戦に乗り出したわけだ。果たして、トランプ氏実筆の手紙が頑固なハメネイ師の心を溶かすことができるか、と期待をもってイラン側の返答を待っていた。

ところがだ。テヘランから返答がない。IRNA通信によると、「ワシントンから手紙が届く予定だと言われているが」とイラン国営テレビの記者が8日、アバス・アラクチ外相に質問した。それに対し、外相は「私たちも同じことを聞いているが、まだ何も届いていない」と答えたという。それが事実ならば、トランプ氏の手紙はどこに消えてしまったのか。それとも、テヘラン側が手紙の内容を脅迫と受け取り、怒り心頭で手紙を燃やしてしまったのだろうか。

トランプ氏と金正恩総書記で機能した「手紙」がハメネイ師との間ではなぜうまくいかないのか。指導者の間でも相性が合う場合とそうでない場合があるから、「手紙」が同じ効果をもたらすと考えるほうが間違いだろう。

トランプ氏の手紙の受取人のハメネイ師は8日、「威圧的な勢力による交渉の呼びかけは問題解決を狙ったものではなく、イスラム共和国に要求を押し付けようとする試みだ」と主張し、トランプ氏の「手紙」については何も言及していない。