研究の結果、暴力を経験した人々のDNAには、ストレス応答を制御する遺伝子に強いメチル化が見られました。
シリア内戦を経験した人は、暴力に関連した14のゲノム領域が変化していたのです。
これは、彼らの体が慢性的なストレスに適応するために起こる生物学的な防御反応の一つと考えられます。
しかし、驚くべきことに、このメチル化のパターンは彼らの子供や孫のDNAにも共通して見られました。
14のうち8つのゲノム領域の変化が、暴力を経験していない孫たちにまで受け継がれていたのです。
さらに別の21のゲノム領域でも、シリア内戦の暴力によって直接引き起こされた変化を確認できました。

つまり、暴力の影響は、精神的なトラウマだけでなく、遺伝子の発現そのものに変化をもたらし、それが次世代に受け継がれる可能性があるのです。
暴力を経験した人々の子供は、ストレス耐性が低くなる傾向があります。
これまで、こうした世代間の影響は、親の教育や生活環境によるものと考えられてきました。
しかし、今回の研究は、それが単なる環境要因ではなく、遺伝子レベルでの変化によるものである可能性を示しています。
この発見は、トラウマを抱えた人々の子供や孫の精神的健康を理解し、適切な支援を行うための新たな手がかりとなるでしょう。
また、エピジェネティックな変化は可逆的であることが分かっています。
つまり、適切な治療や環境の改善によって、暴力やストレスによる遺伝子の影響を軽減できる可能性があります。
例えば、心理療法や運動、健康的な食生活などが、DNAのメチル化状態を正常化するのに役立つことが研究で示されています。