
鮮烈な走りでマニアを魅了したロングノーズFRスポーツ
セリカのイメージが変わった。1981年にモデルチェンジしたニュー・セリカは、旧型とは対照的に、鋭角的な線と面で構成されている。ソフトでいくらか女性的だったデザインから、シャープで筋肉質な男性的プロポーションに変身している。
ニュー・セリカのスター的存在は、やはり現在の国産車の中で最も速いXX2800GTだろう。積んでいるのは、ソアラ譲りの2.8ℓツインカムである。
XXの長く伸びたノーズは、いかにもパワフルだ。フロントエンドからリアエンドまで、鋭いボディラインを見れば、ダイナミックに走る姿が目に浮かぶ。実際、ハイスピードで疾走するXXの姿は、息を呑むほど魅力的だ。ツインカムシックスが唸り、薄く低いノーズが切り裂く空気の壁まで見えるようだ。 XXのCd値は0.35である。細かくいえば、0.342……大人4名が乗れるキャビンを持つクルマでは、世界のトップに立つ数値だ。

インテリアもがらりと変わった。ダッシュボードのデザインはソアラと同じタイプになった。スポーツシートの調整機構は8種も付いている。チルトステアリングとの組み合わせで、ドライビング姿勢はピタリと決まる。このシートは、見た目も機能も、日本でトップスピードを出すクルマにふさわしい出来栄えだ。
アイポイントはやや低め。室内は囲まれる感じのレイアウトになっている。いうなればスポーツ感覚的アプローチだ。このコクピットに座るだけで、スポーツ心のあるドライバーの気分は高まるに違いない。
2800GTの2.8ℓツインカム、5M-GEU型のフィーリングはやはり素晴らしい。ソアラより65㎏軽く、さらに空力性能も優れているのだから、いっそうパワフルになっている。ソアラは速度制御装置を外したテストで、204㎞/hをマークし、ゼロヨンを15.9秒(2名乗車)で駆け抜けた。XXなら、さらにトップスピードは伸びるし、ゼロヨンもあと0.3秒は短縮できるはずだ。
細かく観察するとエンジン・トップエンドの伸びもXXはソアラより少しよくなっていた。基本的には同じエンジンだが。車重の差と排ガス浄化システムの変更のせいだろうか、5速ギアボックスはソアラと共用、ファイナル比も同じだ。

ATは2ウェイOD付き4速ATを採用する。ODの4速で57㎞/h以上になると、メカニカルな動力伝達方式に切り替わる。スリップロスが消え、エンジン回転数がその分低くなって燃費が向上するわけ。4速ロックアップ時のショックは小さいし、その後のアクセルのピックアップは確実にいい。ATのギア比はソアラと同じだが、ファイナル比は3.727から3.909へと大きくされ、ソアラより加速性を鋭くした。AT車でも、その気になればワインディングロードでかなりのアベレージを叩き出せる。
XXのサスペンションはフロントがストラット、リアがセミトレーリングアームの4輪独立式。2000GTはミシュランXVSの195/70HR14ラジアルを履く。ステアリングはラック&ピニオンで、エンジン回転数感応型のパワーアシスト付き。
コーナリング能力は優秀だ。ちょっと飛ばす程度なら適度なアンダーステア傾向で、実に扱いが楽だ。そのうえ、シャープな切れ味も楽しめる。さらにスピードを上げていくと、アンダーステアの度合いは強まるが、過度にはならない。フロントにグリップの残るうちにリアがスライドしはじめる。バランスの取れたハンドリングだ。リアの流れ出しもスムーズで、高度なテクニシャンでなくてもコントロールできる。

前後バランスに優れ、コントローラブルな性格は、2800GTを思い切って振り回しても楽しいスポーツ車にした。ワインディングロードやサーキットでフルに5M-GEU型のパワーを引き出しながら走ってみる。足回りにはそのパワーをしっかり支える能力があり、スライド/ドリフトと、存分に愉快に駆け回らせてくれた。ブレーキ能力もソアラよりも勝っている。メーカーの「ニュー・セリカXXは、スポーツマインドをいっそう高めた」という主張は事実だった。XX2800GTはルックスと同様に、中身も新しく、男性的なスポーツ派に変身している。
ところで、ヨーロッパ仕様のエンジンと足回りの2800GTを富士スピードウェイで走らせるチャンスがあった。DINで170hpというパワーは、さすがに強力(日本仕様の170㎰はDINに換算するとおそらく140〜145hpというところだろう)。FISCOのストレートでの最終速度でも20㎞/hほどの差があった。ヨーロッパ仕様車は強化されたダンパーのため低速での乗り心地はやや悪化するが、高速の感触は素晴らしい。コーナリング時の挙動も一段と安定していた。ヨーロッパでも同クラスのクルマにとって、かなり脅威になるに違いない。スポーツ性を大幅にアップしたXXは、ますます緑的である。
1981年 トヨタ・セリカXX 主要諸元

モデル=1981年式/2800GT
新車時価格=5MT 232万3000円 /4AT 240万6000円
全長×全幅×全高=4660×1685×1315mm
ホイールベース=2615mm
車重=1235(AT1250)kg
エンジン=2759cc直6DOHC(5M-GEU型)
最高出力=170ps/5600rpm
最大トルク=24.0kgm/4400rpm
サスペンション=前ストラット/後セミトレーリングアーム
ブレーキ=前後ベンチレーレッドディスク
タイヤ&ホイール=195/70HR14(ミシュラン)+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m
文・岡崎宏司、写真・TOYOTA/提供元・CAR and DRIVER
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