トランプ氏のウクライナ支援の停止はロシア軍をさらに勢いづけるだけではなく、多くのウクライナ兵士、国民が犠牲となることを意味する。「戦争はゲームではない」というゼレンスキー氏の言葉は事実であり、平時のトランプ氏にはウクライナへの支援停止のリアルなインパクトがひょっとしたら理解できていないのではないか。

ここで強調したい点は、米国のさまざまな軍事情報、衛星情報を共有できないことは武器供与の停止よりウクライナ軍にとって大きなダメージとなるのではないか、ということだ。

英国の「キングス・カレッジ・ロンドン」(KCL)のテロ専門家、ペーター・ノイマン教授は2月15日、ドイツ民間ニュース専門局nTVでの討論会で、「数多くのテロ事件が過去、米国情報機関の情報提供によって未然に防止された。欧州の情報収集力、サイバー防止力などは米国に完全に依存している」と指摘していた。欧州の政治家、メディアは米国、特に、トランプ氏に対して批判的な立場を取るが、安全保障分野では欧州は米国に頼ってきたわけだ。米国との情報共有が途絶えたならば、欧州の対テロ対策は大変だというのだ。これはロシア軍と戦闘中のウクライナにも当てはまることだ。

英国のスターマー首相、フランスのマクロン大統領、そしてゼレンスキー大統領の3首脳が近いうちに訪米し、トランプ政権とウクライナ停戦について再度テーブルに着くという。ロシアのプーチン大統領との首脳会談を実現し、早期停戦に持ち込みたいトランプ氏は欧州からの3首脳に一種の最後通告をするかもしれない。ウクライナ問題は欧州の問題とはいえ、米国の関与がなければ現実的な停戦は厳しい。

マクロン大統領は欧州軍の結成を提案している、また、欧州もウクライナも武器の国内生産を強化する方針だが、戦争では欠かせられない軍事情報の分野ではウクライナを含む欧州は完全に米国の傘に頼っている。繰り返すが、米国がウクライナ側ともはや情報共有しないとうニュースはゼレンスキー氏にとっては最悪のニュースのはずだ。