冷蔵惣菜の宅配サービス「つくりおき.jp」を展開する株式会社Antway。2020年2月のサービス開始以来、自社キッチンの拠点数拡大やパッケージ技術の進化を重ね、急速な事業拡大を実現し、累計提供食数は1,800万食を突破。2024年の売上高は約50億円で、前年比約140%と急成長を続けている。今回は、同社CPO(プロダクト最高責任者)の鷲頭史一氏に、「つくりおき.jp」の急成長を支えるデータドリブン経営の仕組みや独自の組織文化について話を聞いた。
──「つくりおき.JP」の概要について教えてください。
冷蔵のお惣菜が毎週届くサブスクサービスです。4人家族が3回の食卓を賄える分量を一度にお届けします。週に1回、3食プランは8品目、5食プランは11品目が届きます。1日ずつ分けて食べれば、3日間の夕食を作らなくて済むので非常に楽なんですね。また週単位でメニューが入れ替わるので、飽きずに続けられるようになっています。
世の中のEC宅配サービスはほとんどが冷凍ですが、お客様から見たときに冷凍というのは問題を解決しきれていません。例えば、家族やお子様に毎日冷凍食品を出すのは抵抗感がありますし、冷凍と冷蔵では、美味しさのクオリティが違います。そして当社の商品であれば、手作り感のある料理をそのままご自宅の冷蔵庫に保存しておけます。食べたいときにレンジで温めてすぐに出せるので、手間がかからないんですね。
──どうやって多品目の冷蔵惣菜を大量生産しているのでしょうか
一言で言い表すのがなかなか難しいのですが、人手による部分とデジタルのテクノロジーの部分をうまく組み合わせているというところに尽きると思います。人の手は一見非効率に見えますが、実は柔軟性が高いんですね。例えばスライサーを使って自動で野菜を切る場合には、一定の強さを維持して薄く切る必要があります。ところが急に柔らかいものを切ろうとすると、これがなかなかうまく機能しなかったりします。だから意外と機械化が難しい。しかし、人の手であればそこは柔軟に対応できます。このような「手作業の柔軟性と機械化による効率化」、この2つをうまく組み合わせている点が、多品目かつ大量生産を実現できている理由ではないでしょうか。
データドリブン経営と高速なPDCA
──データドリブン経営により利用者の急速な拡大を実現されていますが、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
まず顧客ニーズの収集ですが、定量面と定性面の両面から取り組んでいます。定量的な調査としてLINE上でのアンケートを毎週実施しており、定性的な調査として1時間程度のインタビューを実施しています。そこでアンケートだけでは見えてこない本質的なニーズや、どういった理由でつくりおき.JPを利用しているのかといった情報を集めます。これらのデータを基に新たな訴求軸の仮説を立ててPDCAを高速に回しています。
──実際にアンケートやインタビューで入手した顧客の声をどのように活用しているのでしょうか。
アンケート結果からは、言語データを整理していく中で頻出する単語に着目しています。例えば、「子供が食べてくれない」みたいなワードがたくさん出てくるんですね。こういったものは、多くのお客様に共通するニーズとして着目しています。
また当社の場合、調査会社を挟まずにマーケティング担当が直接お客様にインタビューをしています。担当者が、10人20人とお客様の生の声を聞くことで、なんとなく共通する課題が見えてくるんですね。お客様が非常に熱っぽく話されている部分を肌で感じることができるので、そこで得られるマーケターの直感という部分も大事にしています。
──そのようにして集めた顧客の声に基づいて、どうやって高速にPDCAを回しているのでしょうか。
当社ではドキュメンテーションを非常に重要視しています。何かを案件化するときに、「どういうデータを取って、どういった成果が出たら、こういう動きをする」というのをあらかじめ設計することを徹底しています。いわゆる検証設計ですね。やってから考えるのではなく事前に仮説を立てて、この数字がこうなったら次はこう動きましょうという形です。
このように次のアクションを予め決めておくので、実施した結果に対して変に悩まずに済みます。ある案件を実施した結果、「これは良かったから継続してやりましょう」という感じで、次のアクションまでの時間が圧倒的に短くなるのです。
そして、取り組んだ施策について全てきちんと検証に落とし込んでいます。例えば施策を思いつきでやって、振り返りもしないというケースは意外と多くの会社であるのではないでしょうか。施策の件数自体は他社とそれほど変わらないと思いますが、当社では施策の検証と振り返りを徹底しています。
またPDCAを高速に回していく上で、バリューチェーンを全て自社で持っているという点も大きいと思います。企画者とメニュー開発者と製造者、これら全員が同じオフィス内にいますので、その場で話してしまえばすぐに次のアクションを起こせるのです。これが製造を外部に委託していると、日程調整などで相当な時間がかかってしまいます。通常当社ぐらいの規模の会社だと、バリューチェーンを自社で全部持っていのはかなり珍しいと思います。そこが一見非効率なようで、実は大きな強みになっている気がしますね。やっぱり、どんなに効率化しても、お客様に喜んでもらえるサービスを提供できないと意味がない。