パリからプチ旅行できる距離で、さほど知られていない魅力的な町は?今回はそんな方におすすめしたい、北の港町ル・トレポー周辺をご紹介します。
切り立った白い石膏断崖、英仏海峡の青い海、小石海岸、情緒ある港町、崖上からの絶景など豊かな自然に癒され、お隣町メール・レ・バンの華やかなベルエポック別荘群にうっとり。海鳥と一緒に、北の海辺の美しい二つの町を歩いてみましょう。
断崖谷間の二つの町
英仏海峡のフランス沿岸、ル・アーヴルから北東に130km続くアルバートル海岸の最東端に位置する港町ル・トレポー。その小石海岸は、隣町メール・レ・バンの海岸まで続き、二つの町は石膏断崖ファレーズの谷間に位置しています。地域圏境目のため、トレポーはノルマンディー地方、メール・レ・バンはオー・ド・フランス地方に属していますが、国鉄駅トレポー/メール駅を挟んだ姉妹町です。

トレポー町外れの海際にあるトレポー/メール駅。出口から右手の道路を渡ると、英国海峡を臨む海岸が広がっていて、左側にトレポー、右側がメール・レ・バン。1872年にパリからの鉄道が開通して以来、小さな二つの漁師の町は急速な発展を遂げました。
当時パリのブルジョア階級では海水浴が大流行、多くの資産家や著名人が海辺でバカンスを過ごすためにトレポーを訪れ、隣町のメール・レ・バンには、ヴィラと呼ばれる美しい別荘が次々と建設されました。
ベルエポックの町メール・レ・バン

駅から海岸通りを右に歩けば程なく、美しいヴィラが立ち並ぶベルエポックの別荘街が見えてきます。当時の建築家達が腕を競った彩鮮やかなヴィラは、町中に約400軒もあるそうです。
とりわけ豪華なものが建ち並ぶ海岸通りの風景は圧巻で、とてもフォトジェニック!古き良き時代の写真パネルが何枚か展示されているのも、とても興味深い。

この小さな北の町に、作家のジュール・ヴェルヌ、ヴィクトル・ユーゴー、建築家のギュスターヴ・エッフェルなど錚々たる著名人達も宿泊したという記録からも、かつての町の繁栄ぶりが伺えます。現在のヴィラのほとんどは戦後再建されたものですが、それゆえ色彩が鮮やかで。まるでタイムスリップしたような気分に。
私が訪れた冬場は人通りも少なく、雨戸を閉ざしている別荘も多かったのですが、かえってそれが、凛とした空気と冷たい海にマッチして、とても魅惑的な時間を過ごすことができました。夏本番には、どんな人々が窓から海を眺めるのでしょう?
港町トレポー中心街

駅からトレポー中心街へは、海側ではなくカナルに架けられた橋を渡って入ります。トレポーは小さなブレル川河口に生まれた町で、今日では、川はカナルを経由して港から海へ合流します。中心街の高台に建てられたサン・ジャック教会の上空には、カモメが飛び交っていました。

こちらは陽だまりで休憩中のカモメ達。港町の日常風景に癒されます。

港の中洲には、市営魚市場(ポワソヌリーミュニシパル Poissonnerie Municipale)があります。中に入ってみると、さすがは港町!新鮮な魚介類が山積みです。港の入り口に、漁船の航海の無事を祈る十字架があるのも、港町にはお馴染みの風景です。

漁船を港へと導く灯台もシンプルで愛らしい。近くにはカジノもあります。多数あるレストランでは、新鮮な海の幸を楽しみたいですね。
ケーブルカーで断崖の上へ

トレポーのもう1つの名物は、中心街と崖上を結ぶケーブルカーです。乗車時間1分55秒の間に、眼下の民家から遠くの断崖まで素晴らしい景色が眺められ、くり抜かれた岸壁の中を通って崖上の駅に到着します。
「テラス」と呼ばれる崖上からの展望は、さらに心を揺さぶられる体験でした。130km続くアルバートル海岸の石膏断崖群の中で、トレポーの断崖は最高峰の海上120m!強風に身を任せれば、まるでカモメになった気分になれますよ。

ケーブルカーは、1908年崖上の高級ホテルと中心街を結ぶ目的で開通しましたが、もうホテルは存在せず、崖上には展望台と町を見守る立派な十字架があるのみです。第二次世界大戦時のフランスはナチス軍占領下にあり、1944年、英仏海峡対岸からの連合国軍による沿岸一斉大攻撃(世界史上最大といわれる「ノルマンディー上陸作戦」)により解放されるも、大きな被害を受けたのです。
そんな歴史の名残り、独軍が海峡監視のために断崖をくり抜いて作った巨大な要塞所(カールボルグKahl Borg)も見学可能になっています。

崖上の東端には、19世紀の画家ジュール・ノエル(1815-1881)が描いた崖上からの風景の絵パネルが展示されています。その絵の中には鉄道駅がなく、メール・レ・バンの華やかな別荘街は存在しない、、、日常を離れ、時代の移り変わりに想いを馳せることができたのも、この旅の醍醐味でした。
港町のお土産

港町のお土産は、海の幸の缶詰屋さん「ベル・イロワーズ」を覗いてみて下さい。このお店は、フランス中の海辺の街に全国展開しているので、ご存知の方も多いでしょう。おすすめは、大西洋で獲れた新鮮なツナ、サバ、イワシなどのリエットやムースの小缶。種類も豊富で美味、缶のデザインもカラフルで可愛い。
バゲットパンに塗るだけで美味しいカナッペが完成するので、アペリティフ好きのフランス人にも重宝されています。重さが気にならない程度に、ぜひ小缶を幾つかどうぞ。
ベル・イロワーズ
- 住所:30 Quai François 1er, 76470 Le Tréport, フランス
- 電話番号:+33235828652
- 営業時間:10:30~13:00、15:00~18:30
- 定休日:無し
さいごに 〜トレポーへの行き方
北の港町ル・トレポー周辺の旅、いかがでしたか?冬の北海って超寒そうな感じですが、実は英仏海峡沿岸は英国とフランス二つの陸に挟まれているので、思うほど寒くはないのです。お天気次第ですがね!季節外れの海岸は情緒があって、とても素敵です。

トレポー/メール駅へは、パリ北駅からボーヴェ駅で乗り換えて約3時間です。お気に召したら、ぜひ訪ねてみて下さいね。心のリフレッシュ、請け合い。
文・写真・原田さゆり/提供元・たびこふれ
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