日本に目を向けると、科学関連予算がじりじりと減らされ、真綿で首を絞められるように息苦しくなっている。かつて、農民は生かさず、殺さず苦しめられた時代があったが、今や多くの研究者が低酸素状態にあえいでいるのだ。

ある役人は、研究費は研究者の不満を最小限に配分するのが仕事だと言っていたが、すべてに中途半端にした結果、日本の科学力が地盤低下し続けているのだ。劇薬は誰の目にもわかり苦しみは短いが、ゆっくりと体を蝕んでいく毒は気づいた時には手遅れで、苦しみが長く続く。どちらも嫌だ。

さらに、社会保険料を減らすために、医療費を減らす合意がなされたと報道されていたが、どこを削れば4兆円の医療費削減が可能なのか?病院の80%が赤字という実態、ほとんど給料が上がらない医療従事者、離職者続出の介護従事者、消費税が上がっても診療報酬に反映されない歪さをしっかり見つめて欲しい。若い医師の多くが、自由診療の美容整形に向かうはどうしてなのか?

医療分野でのデジタル化、AIの導入は、医療機関の効率化に不可欠だし、人からAIやデジタル・ロボットへのタスクシフトは医療現場の負担軽減にも不可欠だ。そして、何よりも医療の質の向上、地域格差の解消にもつながる。そして、患者さんにとっては、医療ミス・処方ミスや待ち時間の短縮につながり、医療に対する満足度は上がる。

今は、医療費の削減をする時ではなく、医療分野への大投資をすべき時なのだ!

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。