トヨタ自動車のディーラー「トヨペット」で「アルファード」を760万円で注文したところ、トヨペット側の事情で納期が2カ月延期となり、その間に購入予定者である男性がトラブルに巻き込まれて代金を支払えなくなり、納車日を迎えて30万円を支払い車両を登録。トヨペット側が車両を管理して男性は一度も車両に触れないまま4カ月が経過したある日、男性はトヨペットから売買契約を解除された上で債務不履行の損害賠償として212万円を請求された――。そんな“事件”をリポートした2024年11月10日付「現代ビジネス」記事が少し前に話題となっていた。トヨペット側の主張としては、評価額が約550万円に落ちたため男性は差額の約212万円を賠償すべきというものだが、一般的に新車の購入では売買契約の締結から納車まで数カ月、人気車種では年単位の期間がかかるため、その間に購入予定者が諸般の事情で費用を用意できなくなるという事態は起こり得る。実際に同様の事例はしばしば起きているのか。また、ディーラーとしては、このような対応を取ることは、やむを得ないものなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
2023年6月の新型車発売直後は注文から納車までのリードタイムが2年ほどになる事例も出て、受注停止の動きも広まり、「もっとも手に入りにくい車」の一つといわれたアルファード。価格が500万円台~約1000万円と高価ながらも、注文が殺到するほど高い人気を誇っている。
「現在の納期は3~6カ月ほどと以前よりは落ち着いてきたが、それでもいまだに根強い人気がある。リセールバリューも高いため、これまで『ヴェルファイア』や『プリウス』など別のトヨタ車に乗っていた人がアルファードを求める動きもみられる」(ディーラー関係者)
2020年にトヨタ系ディーラー全店舗で全車種併売化が行われたことにより、アルファードはトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店のすべてで購入が可能だが、今回の問題はトヨペットで起きたものだ。トヨタ系ディーラーの中核的存在であるトヨペットは、一部を除いて都道府県ごとに独立した法人組織となっている。たとえば大阪府を営業エリアとする大阪トヨペットには新車取扱店舗を計71店舗(中古車併売店含む)展開するほか、レクサスやなど複数のブランド店舗も運営している。
一般的にはキャンセル処理される
一般的に、契約から納車までの間に購入予定者が諸事情で代金を支払えなくなった場合、ディーラーはどのような対応をするのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。
「一般的にはキャンセル処理されると思われます。特殊な内容で注文をしている場合、たとえばエアロ装着やローダウンなど車検対応のカスタムをメーカーオプションで発注している場合などは、多少交渉を求められる場合もあるかもしれませんが、販売店からメーカーへの注文は基本的にキャンセル対応できるそうです。つまり、キャンセルできないという話は、あくまでメーカーの対応ではなく、販売店としての対応であり、実際に商談をしている営業担当者や店舗の責任者による対応であると考えるべきでしょう」
では、今回のようにディーラー側が購入契約のキャンセルを認めず、価値低下分の損害賠償を請求するというケースは、あるものなのか。また、ディーラーとしては、このような対応を取ることは、やむを得ないものなのか。
「トヨペットの元社員の方に話を聞いてみましたが、通常はありえない話だということでした。契約書にキャンセルできないという旨の記載があるわけもありませんし、そもそも今回の対象車種であるアルファードは超人気車種であり、仮にキャンセルされたとしても、購入を希望する人は山ほどいます。また、違う見方をすれば、キャンセルされた車両をいったん登録した後にオークションに出品すれば利益が出ます。それほどの人気車種がキャンセル不可という話は考えられない、という意見でした。
さらに、あるディーラーの元社員に話を聞いたところ、過去に実際にあった事例として、ある店舗責任者が自身で利益を得るために、顧客からキャンセルの入った車両を他人名義で登録して、すぐにオークションで転売して数十万円の利益を得たり、キャンセルした顧客に契約違反として違約金を請求するといったことも起きていたといいます。ディーラーのなかには悪質な営業担当者や責任者のいる店舗というのは実在する可能性があるという心構えが、ディーラーを利用する際には必要といえるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)
提供元・Business Journal
【関連記事】
・初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
・地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
・有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
・現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
・積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?