2019年に第1次トランプ政権下の米国による経済制裁を受け、一時は売上が大きく落ち込んだ中国の情報通信機器メーカー・華為技術(ファーウェイ)。世界市場における存在感の低下は必至との見方も強かったが、自前で高い性能を持つ半導体の開発に成功し、経済制裁を受ける直前の水準まで売上と利益が回復している。制裁の影響が解消されたどころか、結果的に技術力と競争力を大幅に向上させたことになるが、なぜ同社は復活し成長トレンドに入ることができたのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 1987年に中国・深センにベンチャー企業として設立されたファーウェイは、比較的高い性能とデザイン性ながら低価格のスマートフォンを強みに、急速に販売を拡大させ、一時は世界スマホ市場トップの座を射止めた。同社にとって大きな転換点となったのが、米国で第1次トランプ政権が誕生したことだった。米国は対中関税措置を繰り出し、19年には「エンティティー・リスト」にファーウェイを追加。これによりファーウェイは米国の技術を使った製品を輸入できなくなり、5Gのスマホを製造できなくなった。また、グーグルが提供するスマホOSのAndroidも搭載できなくなった。この影響は大きく、ファーウェイの売上は2021年には制裁前と比較し約3割も減少した。

 だが制裁から5年が経過し、2024年の売上は早くも制裁前の水準まで回復し、制裁後の底から約4割上昇。同年には世界初となる3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」を中国で発売し、世界を驚かせた。現在はスマホのほか、ノートPC「MateBook」、ウェアラブル「HUAWEI WATCH」、タブレット「HUAWEI MatePad」、スマートホームデバイス、アクセサリーなど幅広い商品ラインナップを展開している。

7nmの半導体の設計・製造に成功

 ファーウェイが復活できた背景について、国際技術ジャーナリストで「News & Chips」編集長の津田建二氏はいう。

「制裁によって欧米をはじめとする先進国での売上拡大が見込めなくなったことを受けて、ターゲットとする市場を中国国内に加えて『サウス』と呼ばれる新興国・途上国に定め、たとえばインド、ネパール、スリランカなどでシェアを伸ばしています。もう一つの要因としては、子会社のハイシリコンが技術力を向上させて7ナノメートル(nm)の半導体を設計し、中国の受託製造会社・SMICで製造を行うことができているようです。ファーウェイのスマホは米アップルのiPhoneや韓国サムスン電子のGalaxyなどと比べるとやや厚みが大きく、デザインに無骨さがあるものの、十分に使える範囲ではあります。

 2018年頃に中国の半導体業界の人から聞いた話によれば、高学歴の若い人は経営的に高収益で高収入が見込めるテンセントやバイドゥをはじめとするネット企業に好んで就職し、半導体業界にはなかなか人材が入ってこない傾向があったようです。中国政府もファンドなどに集中的に資金を投下して育成しようとしていましたが、米国による制裁後は自国で技術開発力を育成する必要性を認識したためか、半導体関連企業やファーウェイのようなハイテク企業に補助金を投下する方針にシフトしました。これによってハイテク企業は潤沢な研究開発費を使えるようになると同時に、好待遇が見込まれるとして多くの優秀な人材も獲得できるようになっているとみられます。

 中国の半導体企業は現段階ではサムスンや韓国SKハイニックス、米マイクロンテクノロジーにはおよばないものの、確実に技術力は上がってきています」

 前述のとおりファーウェイには7nmの半導体が搭載されているが、それ以下の微細化は限界を迎えつつあるという。

「現在の最先端の半導体は台湾積体電路製造(TSMC)などが製造する3nmですが、配線寸法は12~13nm止まりになっておりチップ上の寸法自体はほとんど変わりません。トランジスタや回路の構造を工夫したりして3次元化を行い、単位面積あたりの集積度を上げているのが実情です」(津田氏)

(文=Business Journal編集部、協力=津田建二/国際技術ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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