ベネディクト16世が生前退位した直後、フランシスコ教皇は頻繁に「職務が不能な状況になったら即退位する」と述べていたが、ここ2、3年は生前退位といったシナリオは教皇の口からは飛び出さなくなった。しかし、フランシスコ教皇の病状が伝えられると、「教皇は退位するのではないか」と、メディアで報じられだした。ただし、バチカン教皇庁のナンバー2、パロリン国務長官は「生前退位の話は聞いていない」と一蹴している。

フランシスコ教皇は就任以来、教会の刷新には積極的な発言を繰り返してきた。バチカンで昨年10月、教会の刷新、改革について話し合う世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会が開催された。教皇はシノドス開会前のサン・ピエトロ広場でのミサの中で、「私たちの集まりは議会ではなく、共同体だ。シノドスは多様性の中で調和を生み出すことが目的である。シノドスは、同じ信仰に満たされ、聖性への同じ願いに駆り立てられている兄弟姉妹たちのためであり、私たちは彼らと共に、また彼らのために、主が導こうとしている道を理解することに努めている。参加者は忍耐強く他者の意見に耳を傾けてほしい」と語り、シノドスを通じて教会の精神的刷新を期待している。

2025年は「聖年」だ。「聖年」の幕開けは、ローマ教皇が大聖堂にある「聖なる戸」(HolyDoor)を開ける象徴的な儀式から始まったばかりだ。これは、神への道が特別に開かれる象徴とされている。世界中から多くの巡礼者がローマを訪れる「聖年」は信者にとって、信仰を再確認し、心の刷新を行う絶好の機会といわれる。その「聖年」の始めにフランシスコ教皇が病に伏せたわけだ。

なお、バチカンウオッチャーの間では既に「Xデー」が囁かれ出した。具体的にはコンクラーベ(教皇選出会)の招集だ。教皇死去または退位後、ペテロの後継者、新たな教皇選出が大きな課題となる。コンクラーベには80歳未満の枢機卿が選挙権を有している。誰が選ばれるとしても、聖職者の未成年者への性的虐待問題や不正財政問題などで失った教会の信頼性を取り戻すことは容易ではない。