「標高4500メートルの山の空気」が、もし錠剤になって手軽に服用できるとしたらどうでしょうか。
実際、アメリカ・カリフォルニア州のグラッドストーン研究所(Gladstone Institutes)をはじめとした研究チームは、そんな“山の空気”の恩恵を模倣する薬「HypoxyStat(ハイポキシスタット)」を開発し、重いミトコンドリア病のマウスの寿命を3倍以上も延ばし、深刻な脳の損傷さえも回復させることに成功しました。
将来的にはミトコンドリア病のみならず、ほかの病気への応用も期待されています。
研究内容の詳細は『Cell』にて公開されました。
目次
- 酸素が多すぎると逆に病状が悪化する?
- 薄い空気環境を薬で得る
酸素が多すぎると逆に病状が悪化する?

ミトコンドリア病の中でもっとも一般的なものの一つが「Leigh(リー)症候群」です。
この病気ではミトコンドリア――細胞内で酸素を使ってエネルギーを作る小器官――がうまく働かず、体内に使い切れない酸素が過剰に蓄積してしまいます。
酸素は生命活動に必須ですが、過剰になると細胞を傷つけ、結果的に組織や臓器の機能が損なわれるのです。
グラッドストーン研究所のアイシャ・ジェイン(Isha Jain)博士による先行研究では、呼吸する空気の酸素濃度を下げる(高地レベルの低酸素環境を再現する)ことでLeigh症候群モデルマウスの寿命が大幅に延び、脳の損傷などの症状も改善することが示されました。