現代では人工衛星の破片やロケット部品といった宇宙ゴミが日々地上に降り注いでいる。それらゆっくりと燃えながら空を彩る落下物は自然の隕石とは明らかに異なり、今では珍しい光景ではなくなった。しかし、1913年には、そのような光景は想像すらできなかっただろう――。

世界を震撼させた奇妙な光景

 1913年2月9日、カナダからブラジルにかけての広大な地域で、多くの人が同時に目撃した驚くべき天文現象があった。人々が見上げた夜空には、40から60個もの巨大な発光体がゆっくりと移動していたというのだ。まるで空を滑るように並行して進むその光は、数分間にわたって目撃され、人々の記憶に深く刻まれた。

 カナダ・オンタリオ州の目撃者は、この現象を次のように描写している。

「巨大な流星が現れ、途中で2つに分裂したかと思うと、燃え盛る丸太のようになり、火花を散らしながら進んだ。その後、さらに火球が前方へ飛び出し、まるで透明な星のような光がそれらを貫くように流れた。」

 一方、バミューダ諸島では「燃え盛る丸太」は見られず、発光する球体のみが観測された。中には、光を見る前に地面の振動を感じたと証言する者もいた。そして翌2月10日未明、再び「黒い影のような物体」が同じ軌道をたどって空を横切ったというのだ。