今回の研究は、クマノミとイソギンチャクの共生関係が単なる物理的な適応ではなく、分子レベルの戦略に基づいていることを明らかにしました。

また、シアル酸の調節が他の生物にも影響を与えている可能性があります。

例えば、クマノミと同じくイソギンチャクと共生するミツボシクロスズメダイも、幼魚の間だけシアル酸レベルを低下させることが分かっています。

これにより、シアル酸の制御が海の生物たちの共生において重要な役割を果たしていることが示唆されました。

今後の研究では、クマノミのシアル酸代謝を制御する遺伝子や、粘液内の細菌との関係をさらに詳しく解析することが期待されています。

もしかすると、この「生物化学的ステルス技術」を応用して、新たな医療技術やバイオテクノロジーの開発につながるかもしれません。

クマノミとイソギンチャクの共生の秘密が解明されたことで、私たちは海の生態系の奥深さを改めて実感することができます。

次に水族館でクマノミを見るときは、その背後に隠された驚くべき科学の物語を思い出してみてください。

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参考文献

解き明かされた海の謎:クマノミはなぜ宿主イソギンチャクに刺されないのか
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2025/2/15/marine-mystery-solved-how-anemonefish-avoid-stings-their-sea-anemone-hosts

元論文

Anemonefish use sialic acid metabolism as Trojan horse to avoid giant sea anemone stinging
https://doi.org/10.1186/s12915-025-02144-8

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。