巨大地震はいつ、どこで発生するのか――。地震の発生日時と場所さえ正確に分かれば、人的被害を最小限に抑えることができるはずだ。しかし、現在の科学では地震の正確な予測は不可能とされている。

 そうした中、古くから人々が頼りにしてきたのが、地震発生前に現れるとされる「前兆現象」である。動物の異常行動や井戸水の変化など、さまざまな現象が報告されてきたが、その中でも特に注目されるのが「地震雲」だ。果たして、地震雲とは本当に存在し、地震の予測に役立つのだろうか?

 今回は地震発生直前に出現するといわれる特殊な雲、「地震雲」について紹介したい。



■地震雲とは

 地震雲(じしんぐも)とは、その名の通り、大きな地震の前後に出現するといわれる雲である。その特徴は、「低高度に発生する」、「風に流されず、長時間消えない」、「地震の規模にかかわらず発生する」、「珍しい形状をしている」などあるが、地震雲の発生メカニズムについて合意が広く得られた説明はなく、また雲の出現と地震の発生との間に因果関係も明らかにされていない。しかし、2016年4月14日に発生し、震度7を記録した熊本地震の直前にも地震雲らしきものが報告されていたと言われており、その存在を信じる人は多い。

 地震雲が地震の前兆現象であると広く信じられるようになったのは、航空学者の真鍋大覚(まなべだいかく)氏によるところが大きいとされる。真鍋氏は元奈良市長で元衆議院議員の鍵田忠三郎氏と協力し、1986年に「日本地震雲研究会」を設立。地震の前兆となる雲を地震雲と命名したのも真鍋氏だという。