ただし、民主主義が未発達で経済発展が遅れた国では、暴力革命と人民戦争を核心とする『毛沢東思想』は有効性がある。

『毛沢東思想』と現代中国

現代中国においても毛沢東は中国革命を成功に導いた最高指導者として高い功績が認められている。また、毛沢東による革命後の社会主義建設についても、農村における「土地改革」、安全保障面での「中国人民解放軍」の強化、「核保有」などは評価されているとみられる。半面、大躍進政策や文化大革命などへの批判はあろうが、鄧小平の「改革開放」後においてもトータルとしての毛沢東への評価は不変である。

『毛沢東思想』は、先進資本主義諸国にとってのバックボーンが『自由民主主義』であるように、今も中国にとってのバックボーンとなっており、中国を社会主義国家たらしめる根源的思想である。中国は『毛沢東思想』で理論武装しているからこそ軍事力・経済力を含め国家としての強靭性を有するのである。

さらに、習近平国家主席が提唱する「偉大な中華民族の復興」も、毛沢東の「中華民族は光栄ある革命的伝統と優秀な歴史的遺産を受け継いだ偉大な民族国家である」(毛沢東著『中国革命と中国共産党』毛沢東選集2巻378頁)を継承したものである。

中国が国家のバックボーンである『毛沢東思想』を堅持し、中国国民がこれを尊重擁護し団結する限り、中国の衰退はないと思われる。日本としては今後もこのことを念頭に置き対応すべきである。「敵を知り己を知らば百戦危うからず」である。