ここで、彼らが新しい靴を履き始め、その靴がすべてのジャンプを1cm上げると想像してみよう(これは、背景となる地球温暖化が平均して気温を1℃上げることの例えである)。
この靴を履いたからといってジャンプがさほど高くなるわけではない。だが、靴を履くことによって、ジャンプしたときに100回に3回ではなく、10回に1回の割合で72cmに達することになるというわけだ(図1)。

図1 バスケットシューズ詐欺横軸はジャンプの高さ(cm)、縦軸は100回ジャンプしたうちの回数。旧製品(青)に比べて新製品(オレンジ)は1cmだけ平均して高く飛べるだけのことだが、(72センチ以上の)「大ジャンプの頻度が10倍になる!」と宣伝する。
しかし、これは誤解を招く表現だ。靴が理由で、選手のジャンプがとんでもなく高くなったように聞こえてしまうからだ。
悪徳な靴メーカーのマーケティング担当者であれば、「靴がすべてのジャンプを1cm増加させる」と単に述べるよりも、「大ジャンプが10倍も増加する」と言いたがるかもしれない。だが、これは詐欺に近い。
このような宣伝が詐欺ではないような、例外的な場合もあるかもしれない。それは、72cmのジャンプが特に意味のある閾値である場合だ。例えば、バスケットボールをダンクシュートするために、少なくともその高さまでジャンプする必要があるといった場合である。これと同様に、もしも気温に重要な意味のある閾値が存在するならば、その閾値を突破するリスクの頻度を述べることに意義が出てくる。
しかし、気温については、そのような意味のある閾値は存在しない。
ならば、「(Xcm以上の)大ジャンプをする頻度が何倍になるか」ではなく「何cm高くジャンプできるか」に答えるほうが誠実な情報提供であるのと同様に、「(X度以上になる)頻度が何倍になるか」ではなく、「何℃高くなるか」を誠実に情報提供すべきである(図2)。

図2 「熱波が10倍」気候詐欺。横軸は最高気温の高さ(℃)、縦軸は100回の熱波のうちの回数。温暖化前(青)に比べて温暖化後(オレンジ)は1℃だけ平均して高くなっただけのことだが、(35℃以上の)「熱波の頻度が10倍になった!」と宣伝する。