今から約3000万年前、現在のエジプト・ファイユーム地方には広大な森が広がり、多くの動物が暮らしていました。
しかし、その楽園には恐るべき捕食者が潜んでいたようです。
エジプト・マンスーラ大学(Mansoura University)の研究チームは今回、当時のエジプトに君臨していた新たな頂点捕食者のほぼ完全な頭蓋骨を発見したと発表しました。
この生物は新種の超肉食獣であり、強力な顎と鋭い歯で、食物連鎖の頂点に君臨していたと見られます。
研究の詳細は2025年2月16日付で科学雑誌『Journal of Vertebrate Paleontology』に掲載されました。
目次
- 3000万年前のエジプトに君臨した捕食者
- なぜバステトドンは絶滅したのか?
3000万年前のエジプトに君臨した捕食者
エジプトといえば、ピラミッドやスフィンクスが立ち並ぶ砂漠をイメージするかもしれません。
しかし、3000万年前のエジプトはまったく異なる環境でした。
この時代、エジプトのファイユーム地方には広大な森林が広がり、多種多様な動物が生息していました。
恐竜亡き後の時代に、カバやゾウの祖先が湿地帯を歩き回り、霊長類もこの地で繁栄していたのです。
しかし、こうした動物たちは皆、ある恐るべき捕食者の標的となっていました。
この捕食者こそが、今回発見された「バステトドン・シルトス(Bastetodon syrtos)」です。
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この生物は、絶滅した肉食獣のグループ「ハイエノドン目(Hyaenodonta)」に属しており、ヒョウほどの体格で、強靭な顎と鋭い歯で獲物を仕留める超肉食獣(Hypercarnivore)でした。
この動物が食物連鎖の頂点に君臨していたことは、その歯の形状からも明らかです。
ハイエノドン類の特徴的な「はさみ状の臼歯」は、肉を効率的に引き裂くためのものであり、現在のネコ科動物やワニと同じく、食事の70%以上を肉に依存していたと考えられています。