
熱烈な信奉者の存在は、長い歴史と高い完成度の賜物
メルセデス・ベンツの歴史は、そのまま自動車の歴史とオーバーラップする。メルセデス・ベンツの始祖であるゴットリープ・ダイムラーと、カール・ベンツ、このふたりは自動車の父である。ダイムラーは1885年、ガソリンエンジンによって走行した初めての乗り物、「ダイムラー・ライディングカー」を製作し実走テストに成功。一方、ベンツは1886年「モトールヴァーゲン」で「動力を備えた乗り物」というパテントを取得。世界最初の「自動車」という称号を得る。このふたりの限りない情熱と夢が、人間に行動の自由を約束するクルマに市民権を与え、現在のモータリゼーションの発展をもたらした。




ちなみに1899年から続く「メルセデス」の名は、熱心なダイムラーの支援者だったドイツ人富豪、エミール・イェリネックの愛娘、メルセデス・イェリネックに由来する。イェリネックは当時ダイムラー車のディーラーを経営。ダイムラーより優しい語感のメルセデスのほうがブランド価値が高まると判断した。ダイムラーは1902年にメルセデスを商標登録している。

現代のメルセデスは、本流のメルセデス・ベンツ、スポーツ志向のメルセデスAMG、そして電動化を推進するメルセデスEQの3ブランドでビジネスを展開。「最善か無か」をポリシーに掲げ、完璧主義を貫いた時代と比較すると、よりフレンドリーでユーザーニーズに寄り添うクルマ作りに邁進している。
魅力は、コンパクトカーからフラッグシップまで、どのメルセデスに乗っても、心地よい味わいが楽しめる点。なにより疲れない。クルマを発明したブランドだけに、根底に流れる技術と、人をもてなすホスピタリティでライバルを圧倒する。メルセデスを乗り継ぐオーナーが多いのは、この独特のテーストに魅了されるからだろう。
現在の人気モデルは、GLCやGLB、GクラスなどのSUV系、伝統のセダン/ワゴン系も堅調ながら、SUVの躍進が目立つ。

ファンコラム/昔もいまもメルセデスの姿勢は変わらない by 岡本幸一郎
つねにベストを尽くすことを意味する「最善か無か」のフレーズは、メルセデスの姿勢を実に上手く表現している。このフレーズは、以前のほうがよく目にしていた。最近は心なしかあまりアピールしていない気がする。だが考え方が変わったわけではない。もはや当然のことと認識しているからではないか。
メルセデスは、「最善」を追求していち早く新しい技術に取り組んでいる。安全性や走行性能はもとより、近年の電動化や自動化、MBUXのようなインフォテインメント系にいたるまで、それこそ多岐にわたる。クルマに関するあらゆる分野におよんでいるところがメルセデスならではである。
車種ラインアップだってそうだ。実用車から本格的なスポーティモデルまで豊富。プレミアムブランドでこれほど多彩なバリエーションを揃えているメーカーは他に心当たりがない。メルセデスが実践しているワイドな車種展開は、ビジネス上の戦略というより、ユーザーニーズに応える「最善」を追求した結果と感じる。
先ごろの電動化についての目標の見直しは、やはりという思いしかないのだが、製品のほうは目標を達成できるだけのBEVの準備が進められている。
短期間で多くの車種を世に送り出し、それぞれ完成度が非常に高い点はメルセデスなればこそ。本格的な「電気の時代」はまだ少し先だろうが、現時点でここまでできることを見せてもらえたのは心強い。これからも全方位にわたって「最善か無か」を貫き通してくれることを期待する。

提供元・CAR and DRIVER
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