2024年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は、企業の設備投資や外需がけん引し、3四半期連続のプラス成長となった。ただ、GDPの半分以上を占める個人消費は、コメなどの価格高騰が響き、前期よりも回復ペースが鈍化。24年通年の実質GDPも自動車メーカーの認証不正問題が尾を引き、ほぼ横ばいでの着地となった。先行きもトランプ米政権の関税政策など懸念材料があり、日本経済の成長が続くかは不透明だ。

◇コメ値上がり直撃

 10~12月期は半導体製造装置などの設備投資やサービス輸出を中心に外需がけん引し、内閣府幹部は「企業部門は好調で、これまでのコストカット型から成長型(の投資)に変わってきている」と分析する。インバウンド(訪日客)消費も好調で、関連企業からは「10月以降、中国からの直行便(の利用客)が復調している」(JTB)、「新幹線などの鉄道利用が伸びている。ホテルなども順調だ」(JR東日本)との声が上がる。

 だが、内需の柱である個人消費を巡ってはコメや野菜などの値上がりが暗い影を落としている。

 東京都内にある創業約80年の米穀店。精米から袋詰め、配達まで手掛ける店主は「(仕入れ値の上昇で)価格を昨年と比べ2倍に上げた。お得意様は理解してくれるが、飛び込み(来店)の方には『高い』と言われる。周辺スーパーより安い値段に設定しているのに」と悩みは尽きない。

 外食産業では、すかいらーくホールディングスが今年、食材原価上昇によるコスト増加分を昨年の約3倍となる51億円程度と想定するなど影響が広がる。小売業界からも「消費者が(値上げ)価格に慣れればいいと言われるが、懐が増えないのにどうやって慣れろというのか」(増田充男日本チェーンストア協会執行理事)と、物価に所得の伸びが追い付かない現状を嘆く声が聞こえる。

◇トランプリスク再び

 足元では本格始動したトランプ大統領が矢継ぎ早に関税政策を打ち出すなどリスクが顕在化しつつある。米国と中国の貿易摩擦が激化する懸念から「中国以外からの調達を増やして対応したい」(大山晃弘アイリスオーヤマ社長)、「調達の多様化を進め、リスク分散することが大切だ」(田中元樹キユーピー経営推進本部副本部長)などとサプライチェーン(供給網)見直しの可能性に言及する企業が出てきた。

 さらに、トランプ氏提唱の政策が「米国内の人件費や物価の高騰を招く」(野尻公平コロワイド社長)として、米国でのインフレ再燃が事業に悪影響を及ぼすとの見方もある。

 実際、第1次トランプ政権下の18年10月、日本経済は12年11月を「谷」として以降続いてきた拡大局面から後退期に転換。「アベノミクス」を旗印とした安倍晋三政権(当時)での戦後最長の景気回復は実現しなかった。

 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「日本の経済成長率は外需でどうにかプラスになっている状況。トランプ政権の政策次第で、そのわずかな伸びしろが失われる可能性がある」と指摘。今後の対応として、生産性向上による人手不足への対応など構造的課題への取り組みに加え、「一層のインバウンド取り込みなど、新たな需要を掘り起こす『攻め』の戦略が求められている」と話す。(了)
(記事提供元=時事通信社)

提供元・Business Journal

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