スポイラーで4本のタイヤの接地性を計算。走りの安定性アップを目指す
ご存じのとおり、モデューロ(Modulo)は、ホンダ車の純正パーツを開発/製造/販売するホンダアクセスが手掛けるカスタマイズブランドである。2024年11月1日、群馬サイクルスポーツセンターにて、ホンダアクセスの体験試乗会が開催された。
この日のテーマは、「実効空力」を肌で体感すること。ホンダアクセスは、日常の速度域でも体感できる空力効果のことを、実効空力と呼んでおり、エアロダイナミクス開発のキーワードにしている。
乗り味は、サスペンションだけで決まるわけではない。エアロパーツで空気を整流し、走行中に発生する揚力(リフト)を整えることも重要。路面に接地している4本のタイヤを上手く使い、走行安定性向上を図るのが実効空力の目標だ。
実効空力という言葉がはじめて提唱されたのは2008年、FD2型のCIVIC タイプRをベースに開発されたSports Modulo CIVICタイプRにさかのぼる。このときから開発アドバイザーとして、ドリキンこと土屋圭市氏の参画もスタート。当時発売されたModuloスポーツサスペンションは、スポーツ性能はそのままにしなやかな乗り味を実現したことから好評を得て、純正アクセサリーのサスペンションとしては異例の装着率となった。
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いい乗り味ってなんだろう?そう思いながらFD2に乗り込み試乗を開始した。筆者は普段、2011年式のFN2型シビック・タイプRユーロに乗っている。エアロパーツの効果もプラスされModuloスポーツサスペンションを装着したFD2はあきらかに乗り心地がいい。
硬いながらも、タイヤが路面に追従してくれて、しなやかという意味で優れている。ホンダが考えるFUNな走りとはこんな感じだよな、とイメージを膨らませながら、次のクルマに乗り換えた。
このフィットは様子が違った。前後バンパーは外され、紫色の補強パーツが室内外あらゆるところに張り巡らされている。ボディには「実効空力<感>」と書かれていた。
あまり説明がないまま、試乗する。起伏が多く、複雑なカーブが多いサイクルスポーツセンターのクローズドコースを1周して帰ってくると、次は、張り巡らされた補強パーツの一部をとりはずし、再びコースへと戻る。
まったく乗り味が違う。先ほどと同じ凸凹道を走っても突き上げ感を感じる。コーナーで同じようにアプローチすると走りづらい。
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試乗を終えて話を聞くと、このクルマはモデューロの開発メンバーがフィーリングの違いを体感して、クルマを理解するための実験車。技術の継承に役立てられているそうだ。ホンダアクセスの実効空力パーツは、補強バーを装着した状態と同様の走り味を、空力で実現するのが目標という。
本日の主役、いざ新型実効空力デバイスを体感
最後に新型テールゲートスポイラーと従来タイプのテールゲートスポイラーの比較試乗を行った。
新型スポイラーの特徴は、スポイラー裏側に施されたシェブロン形状の実効空力デバイスだ。風が当たった際に起きる大きな渦を、このギザギザの三角形の断面部分によって細かな小さな渦にすることで、走行性能にプラスの効果をもたらすという。左右の翼端板をAピラーの角度と緻密に合わせ、風の流れを計算した。
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結論をいうと、走り出した瞬間(最初のコーナーに向けてステアリングを切り始める瞬間)から違いがわかった。ヨーの発生が少なく、気持ちよく走れる。4輪がしっかりと接地している感覚が伝わり、ドライビングに余裕が生まれた。それはびっくりするほどの違いである。
テールゲートスポイラーの価格は税込6万8200円。効果を考えるとコストパフォーマンスは抜群に高い。気持ちよく走れて気持ちに余裕が生まれるメリットは、ホットに攻めるシーンだけではない。周囲に気が配れるため安全性が高まる。車酔いの防止、悪天候の際の安心感向上にもつながる。
今回、ドライバー、ひいてはクルマの楽しみ方の可能性が広がるホンダアクセスの熱い思いを感じた。
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Writer:横田康志朗 Photo:横田康志朗/提供元・CAR and DRIVER
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